記念館から100mほど山道を登ると、往年の習近平が住んだ窯洞(ヤオドン、洞窟型住居)が3か所ある。「知青旧居」と題された窯洞は、内部に彼の写真を掲げ、文革当時の風俗を再現。室内には観光客が溢れ、盛んに写真を撮っていた。
「昨年6月、陝西省の文物保護単位(重要文化財)に指定されました。文革期の青年文化を象徴する遺跡だとの理由です」(前出・張氏)
中国全土の遺跡や文化財を徹底的に破壊した文革の遺物が、習近平の手にかかれば「重要文化財」に変えられる。まさに歴史の皮肉だ。
「習主席は高官の息子ながら、偉ぶったところがなく、良き農民として村に溶け込んでおられました。将来は偉くなられると思いましたが、まさか国家主席におなりとは。村の誇りです」(村の老人)
村内の各所では、かつて習近平の世話をした老人たちが、彼の礼賛ポスターをベタベタと貼った自宅の部屋を公開し、訛りの強い陝北(せんほく)方言で往年の様子を語る。観光客が彼らにチップを渡し、記念撮影する光景もあちこちで見られた。
※SAPIO2015年7月号