ビジネス

東芝の不適切会計問題「遠因に内紛の匂いぷんぷん」と大前氏

 東芝が不適切会計問題で窮地に陥っている。日本のリーディングカンパニーの屋台骨を揺るがす異常事態だが、大前研一氏は、その遠因に東芝内部の人事抗争があると指摘する。

 * * *
 東芝は、本稿執筆時点でスマートメーター(次世代電力計)の設置案件、高速道路のETC(電子料金収受システム)設備の工事案件、発電所設備の納入といったインフラ関連や電力システム関連、健康関連、家電関連など計21件・累計548億円にのぼる不適切な会計処理が見つかり、定時株主総会で決算報告ができないという異例の事態になった。

 これは極めて深刻な状況である。第三者委員会に調査を委託したということは、経営陣も社内で何が起きているのかわからないということだ。

 今後さらに不適切な会計処理が見つかったら、東芝は解体の危機に直面するかもしれない。機関投資家は会計に問題がある会社の株を持っているわけにいかないからだ。

 今回の問題を招いたのは、経営トップの内紛だと思う。東芝はパソコン部門出身の西田厚聡相談役(前会長)と原子力部門出身の佐々木則夫副会長の確執が続いている。

 2013年春、西田氏は当時社長だった佐々木氏を新設した副会長に棚上げし、パソコン部門出身の田中久雄副社長を新社長に昇格させた。その人事を発表した記者会見では西田氏と佐々木氏が言い争い、西田氏は週刊誌の記事で佐々木氏を公然と批判した。

 さらに2013年の人事では、佐々木氏との社長レースに敗れて副社長から常任顧問に退いていた室町正志氏が取締役に復帰、2014年には相談役に退いた西田氏の後任として会長に就任し、佐々木氏は副会長に留任となった。

 室町氏は西田氏が社長を務めていた当時に右腕と言われていた人物で、半導体部門出身だ。西田氏は、いわゆる“子飼い”の「室町会長―田中社長」体制で佐々木氏を封じ込め、院政を敷いたのである。

 この内紛が不適切会計問題につながったのではないか、と私はみている。

 なぜなら、経営トップの抗争が起きている会社では各部門の業績が政争の具になるため、現場の人たちがライバル部門に攻撃材料を与えないよう、自分の部門の業績を良く見せようとして経理が歪むことがままあるからだ。今回の東芝の場合、その匂いがふんぷんとするのである。

※SAPIO2015年8月号

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン