国内

安保論議より「予算不足による充足率低下が問題」と自衛官

 現在国会では、与野党が安保法制を巡って論戦を繰り広げている。しかし、当事者となる現役自衛隊員たちが考える争点は別の所にあるという。ジャーナリスト・田上順唯氏がレポートする。

 * * *
  この安保関連法案の議論で争点になっていたのは、「集団的自衛権行使の領域が無制限に拡大するのではないか」「アメリカの戦争に巻き込まれるのではないか」「自衛隊員のリスクが高まるのではないか」という点だ。
 
 しかし一部の自衛隊員の中には、こうした論議から一歩先の議論を求める声もある。

 「一番大きな課題は、自衛隊の予算不足に起因する問題です。装備品が足りないとか、100名いるべき部隊に80名しかいないとか、充足率低下が慢性化しているのです。
 
 部隊では人が足りないので、業務を一人で複数担当し、超過勤務が何週間も続いたりする。1か月休暇がないなんて隊員もザラなのです。隊員が疲弊すれば部隊も疲弊します。これでは、いざというときにポテンシャルをフルに発揮できません」(陸自3曹)
 
 そのうえ次々に部隊が新設されると、既存の部隊から経験豊かな隊員を中心に引き抜かれてゆく。人員を引き抜かれた部隊は通常業務にも支障をきたす恐れがある。それが隊員たちの精神状態にも影響する。

 6月5日に閣議決定された、民主党・阿部知子議員の質問への政府答弁書によると、2013年度の自衛隊員の自殺率(人口10万人あたりの自殺者数。事務官を除く)は、33.7人で、国内の成人25.4人、一般職の国家公務員21.5人を上回っていた。
 
 10年ほど前から自衛隊では隊員のメンタルケアに力を入れ、自殺率は減少傾向にあるが、それでも依然高い傾向にある。

「インド洋・イラク派遣隊員、延べ約2万600人のうち自殺者が56人も出たという話が取り沙汰されていますが、原因は戦場でのトラウマだけではなく、こうしたオーバーワークも影響しているのではないかと思います」(陸自2曹)

 激務からうつ病になったり、自殺したりする隊員は多いという。実際、この日の取材に同席するはずだった隊員が欠席した。理由を聞くと、まさにうつ病による休職だった。

※SAPIO2015年8月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
「パー子さんがいきなりドアをドンドンと…」“命からがら逃げてきた”林家ペー&パー子夫妻の隣人が明かす“緊迫の火災現場”「パー子さんはペーさんと救急車で運ばれた」
NEWSポストセブン
豊昇龍
5連勝した豊昇龍の横綱土俵入りに異変 三つ揃いの化粧まわしで太刀持ち・平戸海だけ揃っていなかった 「ゲン担ぎの世界だけにその日の結果が心配だった」と関係者
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン