「ブランド品のコピー業者が交じっているんだと思います。旅行者を装って写真を隠し撮りし、精密なコピー品を作ろうとしているようです。業界の隠語ではそういった方を“フォトグラファー”と呼んでいます。
うちの店で返品を希望されたのはその数日前に『棚全部ください』といって購入された方でした。ですが持ち込まれたものは、バッグの縫製を解いてから雑に縫い直していたのですぐに分かりました」
その大量返品をしようとした男性客も女性モノの「最新のデザインが欲しい」と店員に尋ねていたという。
中国はありとあらゆる商品を模倣するコピー大国として知られる。日本で仕入れた情報をもとにしたブランド品のコピー製品が本国で直ちに製造され、表裏の様々なルートで国内外に流通する。一昔前は素人目にもコピーと分かる代物が多かったが、精緻であるほど値段が吊り上がるので、日本発の写真や図面が「資料」となっているのだろうか。
型を取り終われば用済みだから、返品客が相次ぐのもうなずける。ただし、前述の通り、高級ブランド店は購入時にほつれなど商品の状態を客に確認させ、返品はNGという店舗が多い。しかし相手もさる者。コピー業者は次なる手を用意しているという。
「ブランド店に断わられたその足で質屋に持ち込んで高値で買い取らせようとする。持ち込まれるバッグのなかには解体後にコピーの素材と本物の素材を組み合わせて作った“混合品”もある。一つの本物から二つも三つも混合品が作れる上に、我々がコピー商品を見分けるためのポイントである、金具や取っ手などが本物だと騙されてしまう。少しでも投資を回収しようとするのが彼らのやり方です」(新宿の質店店主)
コピー品の「爆売り」も進んでいるのだ。
※週刊ポスト2015年7月31日号