試合終了の笛が聞こえた瞬間、屈強な肉体を持つ男は肩を落とした。7月18日までアメリカで行なわれた第5回アメリカンフットボール世界選手権。日本代表の脇坂康生選手(46)は、決勝で敗れたアメリカ戦を「レベルの差がありすぎた」と振り返る。
1999年に始まり4年に1度行なわれる大会に全て出場しているのは世界でただ一人、脇坂選手だけだ。
アメフト歴は31年で、平均年齢27.8歳の日本代表チームの中では最年長。ディフェンスの要としてチームを牽引する彼は普段、5万5000人の従業員を擁するパナソニックグループの1社で人事部長を務めている。
「会社ではおとなしく黙々と仕事をするタイプですが、試合で若い選手をなぎ倒す姿はまさに“中年の星”。勇気をもらえます」と、同僚や部下からの信頼も厚い。家では娘2人を持つ父親でもある。
「充実した人生だと周りに思われがちですが、疑問に思うこともあります。身体のことを考えると、同僚と大酒を飲んで憂さを晴らすなんてできないですしね」
次回大会では50歳となる。
「できれば現役を続けたいですが、体力の衰えは否めませんし、若い選手にもっと機会を与えてあげたい」
そう謙虚に笑ってみせるが、胸の奥には打倒アメリカへの強い想いを宿す。
撮影■WEST
※週刊ポスト2015年8月7日号