ラリーさんは、プロの芸人でもYouTube向けの研究が必要なのだという。

「YouTubeでは、出演者がカメラに向かって直接話しかけるスタイルが主流です。まるで目の前で友達がしゃべっているように見えるので、視聴者はつながりを体験することができます。一方、テレビのバラエティー番組を観ている視聴者は、あくまで窓からスタジオを覗き見している状態です。見せ方一つとってもこのような違いがありますし、YouTubeでどういったネタがウケるのか分析することも重要です。キチンとした、ターゲティングとマーケティング。毎日更新し続けることも、固定客を付けるためには必要不可欠です」

 さらに、YouTubeには無数のライバルがいる。テレビなら地上波で8チャンネル前後。YouTubeには数え切れないほどのチャンネルがあり、その中で勝ち抜かなくてはならない。「ある意味テレビよりもハード」(ラリー遠田さん)な戦場だ。

 どうやら「素人にできるなら自分にもできそう」という甘い考えでは、いくらお笑い芸人でもうまくはいかないらしい。それは一度名前の売れた芸人も同じで、なぞかけ芸でブレイクしたねづっちのチャンネル登録者は1000人を超える程度。有名人斬りの波田陽区に至っては380人程度しかいない。波田陽区は「こんなところにフェニックス」シリーズなる動画を連続投稿しているが、YouTubeの研究が足りなかったのか、今や自分が「つまらない」と斬られる側に。一時は精力的に投稿を続けていたが、気持ちが切れてしまったのだろうか、この3か月ほど新しい投稿が見られない。

 では本格的に取り組めば芸人たちの逆襲もあるのかというと、そう単純なことでもないらしい。

「若手芸人たちは、やっぱりテレビに出たいんです。『この人みたいになりたい』というあこがれの先輩芸人は、テレビで活躍している。でもYouTubeにはまだ成功パターンがないから、目標を立てづらいという側面があります。収入の問題もあるでしょう。テレビに出れば一定のギャラがもらえますが、YouTubeは手間暇かけてもお金になるかどうかわからない。『こんなことに時間をかけていいのか』という思いがつきまとう中では、なかなか本気になれないのだと思います」(ラリー遠田さん)

 お笑い芸人の中から、チャンネル登録者100万人を超える成功者が出てくれば、事情も変わってくるかもしれない。それまでは多くの芸人が試行錯誤を繰り返すことだろう。そんな中で、「成功しやすい芸人」はどんな芸人か。

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