次に「社会参加アシストシステム」の取り組みは、介護用器具として開発されたアシストスーツをも東京オリンピックに活用するという。
アシストスーツは、介護が必要な高齢者の方を抱き抱えたり、持ち上げる際、介助者の腰や腕への負担を軽減させるロボット技術を用いた機器。そのアシストスーツを競技場のスタッフに装着し、陸上ハードル競技のハードルを並べる際に活用する。小柄な女性でも、ハードルを5個も10個も一遍で運ぶことができる。
このアシストスーツの技術開発は、国立研究開発法人NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「福祉用具実用化開発推進事業」や、「日本医療研究開発機構」(AMED)の「ロボット介護機器開発・導入促進事業」で進められている。
すでに菊池製作所の「マッスルスーツ」や、サイバーダインの「ロボットスーツHAL」が実用化されており、こうした技術をオリンピック会場でも活用しようとしている。
さらに、今度のオリンピックは「おもてなし」が一つのキーワードになっているが、「ジャパンフラワープロジェクト」はその一環だ。大会会場や公共空間を花で埋め尽くし、選手や来場者をもてなそうという取り組みである。
これがプロジェクトの一つとなったのは、8月に行われるからだ。猛暑の中、花を飾ってもすぐに干からびてしまう。そのため、暑さに負けない、日保ち性の高い花を開発する。併せて、花を維持させる「ミスト噴霧」や「冷蔵庫栽培」といった技術開発を進め、「低酸素処理」や「梱包資材」等の開発も行う。オリンピック後には、こうした技術を海外に輸出することを目論んでいる。
生産体制も調整が必要となる。夏に需要の高い花はお盆に使われる菊ぐらいで、もともと市場に他の花は出回らない。そこで生産者に協力を求め、夏場にダリアやバラ、カーネーション、スイートピーなどを供給できる態勢を整えるのだという。
また、メダリストには「ビクトリー・ブーケ」を贈呈する。そのための試験活動も始まっており、7月5日にお台場で行われたランニングとウォーキングのイベントで、入賞者にビクトリー・ブーケを贈呈した。8月13~18日に行われる全日本ジュニア体操競技選手権でも、優勝者らにビクトリー・ブーケを贈呈するという。
このように、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催時には、様々な日本の先端技術が披露されることになるという。しかし、いくら国が旗を振ったとしても、オリンピックは東京都の事業であり、具体的な運営は組織委員会に権限がある。だから、いくら政府のタスクフォースが旗を振っても、組織委員会が採用しなければ、成果を披露することはできない。
元経産官僚で慶応大学大学院教授の岸博幸氏はこんな疑問を呈す。
「東京五輪をダシにした政府の悪乗りにしか見えない。総合科学技術・イノベーション会議が存在感を示したかったのではないでしょうか。
そもそも国は汎用性の高い基礎研究をし、個別の技術は民間主導にすべき。その意味でも行き過ぎ。また、あたかも東京五輪でやるかのように打ち出していますが、その裏付けもないとしたら、新国立競技場のように、責任者不在のプランと言えるでしょう」
さて、2020年、日本オリジナルで夢のあるアイデアがどれだけ実現するか。