ビジネス

企業とLGBT 迅速対応が新たなビジネスチャンス生む可能性も

LGBTの婚活パーティーも盛んに行われている

 多様な人材を積極的に活用しようと「ダイバーシティ戦略」を掲げ、女性や外国人の積極登用を進める企業は増えている。しかし、いまだに対応が遅れているのが、「LGBT」と呼ばれる性的マイノリティー(少数者)の受け入れ体制だ。

 レズビアン(女性の同性愛者)、ゲイ(男性の同性愛者)、バイセクシャル(両性愛者)、トランスジェンダー(生まれついた性別に違和感を持つ人)の頭文字をつなげたLGBT。その存在に対する認識は深まりつつある。

 東京都渋谷区が10月より同性カップルに“結婚に相当する関係”を認めるパートナーシップ証明書を発行する予定のほか、全国で複数の地方自治体が同様の支援策を検討するなど、行政の後押しによりカミングアウトするLGBTも増えた。

 電通が今年4月に20~59歳の約7万人を対象に行ったインターネット調査では、全体の7.6%、およそ13人に1人がLGBTの当事者だという回答を得た。

 だが、カミングアウトしたことがある人(43.2%)のうち、相手は友人や母親、父親などが上位を占め、職場の同僚(4.8%)、上司(2.4%)は極めて少なかった。職場で差別的な言動を受けたり、転職に追い込まれたりする割合が半数を超えた結果を見ても、LGBTにとって働きやすい社会になっているとは言い難い。

「堅い職業柄もあって、職場でカミングアウトしにくい状況です。上司からは『いい年して彼女もいないのか?』と言われることも度々。

 将来的には堂々とゲイのパートナーと一緒になって、家族手当や慶弔休暇なども申請できたらいいのですが、会社がそこまで福利厚生で配慮してくれる見込みはありません」(30代・金融業界)

 東洋経済が発行する『CSR企業総覧2015年版』によれば、LGBTへの何らかの取り組みを行っている企業は13.1%にとどまっている。しかも、「行っている」と回答した98企業のうち、日本生命保険、大成建設、積水化学工業、ソニー、スズキなど、そのほとんどがLGBTを理解するための人事、社員研修を始めた段階だ。

 欧米では早くからLGBTへの差別を禁止する法整備や、就業規定の変更でLGBTの人権尊重を盛り込む企業が増えるなど対策が進んできたが、なぜ日本企業は遅れているのか。

 人事ジャーナリストの溝上憲文氏がいう。

「米国企業がLGBTの対応に取り組みだした1990年代、日本企業はまだ女性差別が根強く残り、グローバル化で外国人採用にも頭を悩ませていた時代。とても少数派のLGBTにまで手が回らなかったのです。

 いま、ようやく女性や外国人の登用が進んだといっても、セクハラやパワハラ、マタハラといったハラスメント対策に追われる始末。実態も把握せずに、『ウチの会社にはLGBTはいないから必要ない』と公言する人事担当者もたくさんいます。あらゆる企業で“LGBTガイドライン”が整備されるようになるまでには時間がかかるでしょう」

関連キーワード

関連記事

トピックス

鮮やかなロイヤルブルーのワンピースで登場された佳子さま(写真/共同通信社)
佳子さま、国スポ閉会式での「クッキリ服」 皇室のドレスコードでは、どう位置づけられるのか? 皇室解説者は「ご自身がお考えになって選ばれたと思います」と分析
週刊ポスト
松田烈被告
「テレビ通話をつなげて…」性的暴行を“実行役”に指示した松田烈被告(27)、元交際相手への卑劣すぎる一連の犯行内容「下水の点検を装って侵入」【初公判】
NEWSポストセブン
Aさんの左手に彫られたタトゥー。
《10歳女児の身体中に刺青が…》「14歳の女子中学生に彫られた」ある児童養護施設で起きた“子供同士のトラブル” 職員は気づかず2ヶ月放置か
NEWSポストセブン
会談に臨む自民党の高市早苗総裁(時事通信フォト)
《高市早苗総裁と参政党の接近》自民党が重視すべきは本当に「岩盤保守層」か? 亡くなった“神奈川のドン”の憂い
NEWSポストセブン
知床半島でヒグマが大量出没(時事通信フォト)
《現地ルポ》知床半島でヒグマを駆除するレンジャーたちが見た「壮絶現場」 市街地各所に大量出没、1年に185頭を処分…「人間の世界がクマに制圧されかけている」
週刊ポスト
連覇を狙う大の里に黄信号か(時事通信フォト)
《大相撲ロンドン公演で大の里がピンチ?》ロンドン巡業の翌場所に東西横綱や若貴&曙が散々な成績になった“34年前の悪夢”「人気力士の疲労は相当なもの」との指摘も
週刊ポスト
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(インスタグラムより)
「バスの車体が不自然に揺れ続ける」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサー(26)が乱倫バスツアーにかけた巨額の費用「価値は十分あった」
NEWSポストセブン
イベント出演辞退を連発している米倉涼子。
《長引く捜査》「ネットドラマでさえ扱いに困る」“マトリガサ入れ報道”米倉涼子はこの先どうなる? 元東京地検公安部長が指摘する「宙ぶらりんがずっと続く可能性」
アドヴァ・ラヴィ容疑者(Instagramより)
「性的被害を告発するとの脅しも…」アメリカ美女モデル(27)がマッチングアプリで高齢男性に“ロマンス”装い窃盗、高級住宅街で10件超の被害【LA保安局が異例の投稿】
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト・目撃者提供)
《ラブホ通い詰め問題でも続投》キリッとした目元と蠱惑的な口元…卒アル写真で見えた小川晶市長の“平成の女子高生”時代、同級生が明かす「市長のルーツ」も
NEWSポストセブン
韓国の人気女性ライバー(24)が50代男性のファンから殺害される事件が起きた(Instagramより)
「車に強引に引きずり込んで…」「遺体には多数のアザと首を絞められた痕」韓国・人気女性ライバー(24)殺害、50代男性“VIPファン”による配信30分後の凶行
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《真美子さんと娘が待つスイートルームに直行》大谷翔平が試合後に見せた満面の笑み、アップ中も「スタンドに笑顔で手を振って…」本拠地で見られる“家族の絆”
NEWSポストセブン