ライフ

【著者に訊け】中澤日菜子氏 色々な世代の恋愛描く『星球』

【著者に訊け】中澤日菜子氏/『星球』/講談社/1500円+税

 共通項はいくつかある。恋の話。星の話。そして知っているようで知らなかった、発見の話でもある。

〈わたしも知らなかったわたしが、いま初めて、ちいさな声を上げていた〉
〈そんなふうに考えたこと、自分はいちどもなかったです。なんか、すごい……〉

 主人公たちはそう言って驚きや気づきを素直に表現し、その途端、意味を持たなかったものが意味を持ち、日常が輝き始める瞬間を、中澤日菜子著『星球』では計6編の物語に切り取る。星の光がそうであるように、意味もまた生まれたり消えたり、常に点滅するのだ。

 ちなみに星球とは表題作の主人公〈わたし〉が脚本を書いた芝居にも使われる照明装置のこと。ラストでは〈頭上に張り巡らせた星球=星を模した小さなライトが光りだす〉、らしい。確かにそんな言葉、全然〈知らなかった〉!

「周囲には『星球が小説になるの?』って驚かれるくらい、演劇界ではごくありふれた道具なんですけどね。私にはむしろ、〈別れ話に最適な場所は高級焼肉って学んだよ〉という『七夕の旅』の主人公〈麻衣子〉の台詞の方が大発見でした。1皿3000円もするカルビを焦がしたくなくて、女は食べることに集中する。そのスキに男は別れを切り出し、いいお肉を食べきった満足感で全てをうやむやにされちゃうという(笑い)」

 演劇を始めたのは高校生の時。大学在学中に劇団を結成し、出版社勤務の傍ら脚本や演出を手掛けてきた。

「私が思うに戯曲は引き算の文学で、演出家や役者に託す余地を残して骨格だけを書く方が完成度は高い。一方小説は細かい情景描写や地の文で形作る足し算の文学で、あえて今まで封印していた表現に挑戦したのが、2014年の初小説『お父さんと伊藤さん』でした」

 本書でも台詞回しや間の入り方が絶妙で、一つ一つは短い物語が、生き生きと身体性をもって躍動する。

関連記事

トピックス

違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《レーサム創業者が“薬物付け性パーティー”で逮捕》沈黙を破った奥本美穂容疑者が〈今世終了港区BBA〉〈留置所最高〉自虐ネタでインフルエンサー化
NEWSポストセブン
ソロとして音楽活動5周年を迎える香取慎吾
《ソロで音楽活動5周年》香取慎吾が語った「5人とは違って…」「もっとできるはずなのに」ソロで経験した“挫折” ライブツアーでは「パーフェクトビジネスアイドル」としてファンを沸かせる
NEWSポストセブン
13年ぶりの写真集『ふたたび』(双葉社)を5月30日に発売
小向美奈子 Xで「今年結婚します!」投稿の真意を本人に聞いた 今でも「年に1~2回くらいは求婚される」と語る彼女は“ダーリン”との未来予想図をどう描くのか
NEWSポストセブン
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
NEWSポストセブン
6月3日に亡くなった長嶋茂雄さんとの写真を公開した大谷翔平(公式インスタグラムより)
《さようなら長嶋茂雄さん》大谷翔平から石原裕次郎まで、誰からも愛された“ミスター”の人生をスターたちとの交流で振り返る 
女性セブン
沖縄を訪問される天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年6月4日、撮影/田中麻以)
《愛子さま 初めての沖縄ご訪問》ブルーのセットアップで母娘の“おそろい”コーデ再び! 雅子さまはくすみカラーで落ち着いた着こなしに
NEWSポストセブン
人気インフルエンサーがレイプドラッグの被害者に(Instagramより)
《海外の人気インフルエンサーが被害を告発》ワインに“デートレイプドラッグ”が混入…「何度も嘔吐し、意識を失った」「SIMカードが抜き取られていた」【オーストリア】
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平が帰宅直後にSNS投稿》真美子さんが「ゆったりニットの部屋着」に込めた“こだわり”と、義母のサポートを受ける“三世代子育て”の居心地
NEWSポストセブン
『激レアさんを連れてきた。』に出演するオードリー・若林正恭と弘中綾香アナウンサー
「絶対にネタ切れしない」「地上波に流せない人もいる」『激レアさんを連れてきた。』演出・舟橋政宏が明かす「番組を面白くする“唯一の心構え”」【連載・てれびのスキマ「テレビの冒険者たち」】
NEWSポストセブン
「ミスタープロ野球」として広く国民に親しまれた長嶋茂雄さん(時事通信フォト)
《“ミスター”長嶋茂雄さん逝去》次女・三奈が小走りで…看病で見せていた“父娘の絆”「楽しそうにしている父を見るのが私はすごくうれしくて」
NEWSポストセブン
現場には規制線がはられ、物々しい雰囲気だった
《中野区・刃物切りつけ》「ウワーーーーー!!」「殺される、許して!」“ヒゲ面の上裸男”が女性に馬乗りで……近隣住民が目撃した“恐怖の一幕”
NEWSポストセブン
シンガポールの元人気俳優が性被害を与えたとして逮捕された(Instagram/画像はイメージです)
避妊具拒否、ビール持参で、体調不良の15歳少女を襲った…シンガポール元トップ俳優(35)に実刑判決、母親は「初めての相手は、本当に彼女を愛してくれる人であるべきだった」
NEWSポストセブン