それによれば、当時の東京地検検事正・馬場義続は、まさに捜査の渦中、吉田や緒方と何度も密会していた。東京地検検事正といえば特捜部を率いる捜査現場の最高司令官。その馬場が捜査対象側と密会するなど言語道断。何が話し合われたかはもはや藪の中だが、指揮権発動のわずか1か月前、緒方はこう書き遺している。

〈Bより連絡、漸く問題解決に近く〉
 
 Bは馬場のことであろう。捜査指揮官はなぜ緒方と密会を続けたのか。問題解決とはいったい何か。当時を知る検察関係者はこう明かした。

「捜査が惨めな失敗に終われば特捜部の存亡に関わりかねない。ならば検察の権威を堅持しつつ、勝ち目の薄い戦を収拾したほうが得策。そこで政権側に指揮権を発動させる方向に持っていったんだろう」

 事実とすれば、馬場は傑出した策謀家だったことになる。暴走捜査を“外部要因”で幕引きし、検察を“悲劇の被害者”とすることに成功した。

 しかも以後、政治が検察をコントロールする術である指揮権はタブー化し、検察の独立性は過剰なほど不磨の大典として保護されることになったのだ。のちに馬場は検事総長に就任、検察に「馬場時代」を築き上げる。

※SAPIO2015年9月号

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