国際情報

中国の官僚 「死刑判決に至る収賄額」が引き上げられている

 続出する不祥事はある種の混乱も巻き起こしていいる。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。

 * * *
 中国の刑事裁判をめぐる報道に接して日本人がつい首をひねってしまう場面は少なくない。例えば、「執行猶予付き死刑」だ。これは実質的な無期懲役なのだが、たいていの日本人は「なぜ死刑に執行猶予が?」となるはずだからだ。

 中国は2013年から習近平の打ち出した反腐敗キャンペーンによって次々に汚職官僚が摘発され、年間で5万人以上の官僚(政治家)が起訴されたとも伝えられている。

 こうした裁判を通じて、天文学的な巨額賄賂が飛び交う社会の実態が明らかにされるのに対し、汚職官僚への判決はときに「死刑」であり、ときに「執行猶予付き死刑」、またときには「無期懲役」であったりして、その基準が話題になることも少なくなかった。

 裁きを下す司法の側には、ある程度の目安があるのだろうか。

 実はこれ、極めて曖昧なのだ。

 2015年8月29日、全国人民代表大会常務委員会で刑法の改正が一つの焦点となったのだが、このとき明らかにされたのが汚職の罪の軽重を決める基準があまりに古く現状に適合しないという問題だった。

 罪の重さは4段階に分けられており、それぞれ収賄額で5000元未満、5000元以上5万元未満、5万元以上10万元未満、そして10万元以上となっていたのというのだ。

 2014年11月に摘発された馬超群(元北戴河供水総公司総経理)が自宅に現金1億2000万元(約22億8000万円)と金の延べ棒37キログラムを隠し持っていたケースを挙げるまでもなく、昨今の収賄額はどれも莫大で、収賄額が10万元を下回ることなどほとんどないのだ。

 つまり、どれも10万元以上の深刻なケースであり、金額から客観的な判断を下す基準は司法の側にはなかったということだ。この事実は換言すれば、司法は極めて政治的に判決を決めてきた可能性が高いということになる。

 事実、過去20年、汚職で裁かれた官僚たちの判決には一定の規則が存在しない。

関連キーワード

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン