多くの在留日本人を取材し、著書『脱出老人』(小学館)にまとめたノンフィクションライターの水谷竹秀さんはこう語る。

「彼らがわざわざフィリピンへ来る理由をつきつめていくと、生活がしやすいというのもありますが、『幸せに生きたい』という願いへ行きつく。

 市役所勤めをしてずっと独身だった男性は、『日本では、スポーツクラブなどに高齢者が行ってもプライベートにはなかなか踏み込まずに、当たり障りのない会話で終わってしまう。人とのつながりを感じられなくて寂しい』と話していました。日本で寂しさを抱える高齢者が多いことを肌で感じ、老後の幸せは『人とのつながり』に尽きる、とぼくは思ったんです」

 内閣府の調査では、単身暮らしをする高齢者の約45%が、「孤独死を身近に感じている」と、回答している。昨今の日本では、隣人はもちろん、家族の縁さえ薄くなっていることがこの数字に表れているといえよう。

 ただそうはいっても、定年を迎えた高齢者が海外移住の決断にはなかなか踏みきれないし、子供の立場からも、親を“姥捨山”のように海外へ押しやるなんて即決できないだろう。

 そんな時には、もっと軽い気持ちで、「そうだ、フィリピンへ」と思い切るのも悪くない。水谷さんが言う。

「ポイントとしては、日本に帰れる場所を残しておくことです。何かあった時に戻ってこられるように、家を持ちながら別荘感覚で試してみることをお勧めします。家があれば、フィリピン人の恋人ができた時に日本へ連れて帰ってくることもできますしね」

※女性セブン2015年10月22・25日号

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