鍋つゆの異変はもうひとつある。「〆(シメ)」へのこだわりだ。ミツカン(Mizkan)が2013年に『〆まで美味しい鍋つゆ』シリーズをリニューアルで売り上げを大きく伸ばしたが、今年はさらにシメまで考えた商品提案が盛んに行われている。
ダイショーも野菜鍋を打ち出すと同時に、「白菜鍋なら“おかか雑炊”」「もやし鍋なら“温玉ねぎラーメン”」とシメのお薦めメニューを提案し、商品の裏にはレシピを表示している。
鍋の味を途中で変えられる『味チェンジ鍋つゆ』シリーズを出してきたキッコーマンも、新商品の『贅沢だしがおいしい鰹だしよせ鍋つゆ』で〈シメはカレールーを1個入れて、カレーうどんでお楽しみください〉と推奨するなど、様々な鍋のアレンジを紹介している。
そして、ついには即席ラーメンの大手ブランドが鍋ジャンルへの参入を果たした。10月に『サッポロ一番』でお馴染みのサンヨー食品が、鍋専用の粉末スープとシメのラーメンをセットにした商品(みそ、塩)を発売したのだ。
「ラーメンの世界だけで考えると、丼の中に添える野菜にも限界があります。そこでサッポロ一番は既存ブランドのスープと麺をうまく活用しながら、鍋に入れる野菜・魚介のダシでいろいろな〆ラーメンの味わいが出るようにアレンジしました。今までありそうでなかった商品です」(重盛氏)
鍋専用の麺といえば、永谷園が1993年に発売した『煮込みラーメン』がパイオニア的存在だが、同シリーズも〈今年は煮込みラーメンで鍋しよう!〉と大々的に謡っており、シメを巡る競争は激しさを増してきた。
市場調査会社の富士経済によれば、2015年の鍋つゆ市場は、前年比102%の約345億円。〈企業間の競合激化が予想されるが、個食対応ニーズも高くなり、市場の拡大に寄与することが期待される〉と分析する。
「寒い季節に鍋を囲みたいという日本人の欲求は不変」(重盛氏)だけに、顧客満足度や付加価値を高めた「鍋つゆ」の進化は今後も続いていきそうだ。