食品に含まれる栄養成分の健康効果に関する研究が進んでいる。認知症においても、原因となる物質を阻害する成分など、予防効果が期待される発見は数多い。具体的な食べ物について、神経内科医・作家の米山公啓さんとおくむらメモリークリニック院長の奥村歩さんに解説してもらった。
しっかりと体力をつけ、しかもボケ予防にもなる肉料理は、牛肉のステーキよりも、羊肉のジンギスカン。
「羊肉には、カルニチンが牛肉の約3倍、豚肉の約9倍含まれる。これは記憶力と思考力にかかわるアセチルコリンの合成に欠かせない成分です。ちなみに鶏肉は、脳の老化や認知症発症を防ぐ効果があるイミダゾールジペプチドが豊富なのでおすすめです」(米山さん)
洋食店で注文するなら、オムライスよりはカレーライスを。
「カレーをよく食べるインド人の認知症リスクはアメリカ人の3分の1という研究報告があり、カレーの代表的なスパイスであるターメリックに含まれるクルクミンは、認知症予防に働くと考えられています」(奥村さん)
疲れた時に食べるなら、キャンディよりはチョコレートがいい。
アルツハイマー型認知症患者の多くは、脳の海馬に含まれるたんぱく質・BDNFが減少している。チョコレートに含まれるカカオポリフェノールを摂ると、これが増えるという研究結果もあり、チョコレートには認知症予防も期待できる。
DHA、EPAが豊富なイワシ。ボケを予防できる食べ方は、塩焼きよりは刺身。青魚の脂に含まれるDHA、EPAなどの不飽和脂肪酸には、脳を活性化し、認知症予防に効果があることが知られている。網で魚を焼くと脂が下に落ちてしまい、せっかくのよい成分も落としてしまうことになり、もったいない。
健康にいい野菜。より食べた方がいいのは、白菜などの淡色野菜よりは、ほうれん草などの緑黄色野菜。
「アルツハイマー型認知症患者の血液は酸化障害が強く起こり、血中ビタミンCとβカロテンの量が低いという報告があります。認知症予防には抗酸化作用のあるビタミンC、βカロテンが豊富な緑黄色野菜を」(米山さん)
ちなみに、歯と認知症発症の因果関係についてもさまざまな調査が行われているが、いずれも「残っている歯の本数が少ないほど、認知症になりやすい」という結果が出ている。なかでも、歯が生えないマウスは、大脳皮質にアミロイドβの沈着が多くみられ、硬いエサが噛めなくなったマウスは、記憶機能のテストの成績が著しく低下し、海馬の神経細胞が大幅に減少したという。
「噛むことは脳を刺激すること。歯を健康に保つことも認知症予防につながります」(奥村さん)
※女性セブン2015年11月5日号