今回の最大の問題は、まだ“底”が見えないことである。つまり、ディーゼルエンジンすべてがだめなのか、工夫すれば排ガス規制をクリアできるのか、その場合には燃費がどのくらい悪くなるのか、という点が明らかになっていないのだ。VWが不正ソフトに頼ったのは、いくら努力しても排ガス規制と燃費の壁を乗り越えられなかったからではないか、と見ることもできる。

 となると、ディーゼルエンジンは排ガスに関して非常に難しい固有の問題を抱えている可能性も否定できない。だとすれば、ディーゼルエンジンの将来性そのものが危ういことになる。

 また、VWについては、欧米市場でリコール対応だけでなく、全部撤収して弁償しなければならない状況になったら、VWにとって最大市場の中国でも同様の動きが広がる可能性がある。

 VWが中国で販売しているディーゼル車の大半はトラックだとされるが、もし中国にも排ガス不正問題が拡大すれば、あるいは中国人の特徴としてアメリカのユーザーに弁償しているなら自分たちも、という血走った取り付け騒動に発展したら、VWはジ・エンドだ。

 ちなみに日本でVWは、来年投入予定の新型「パサート」のディーゼル車を、不正がないことを確認しているとして予定通り発売する見通しだという。だが、この状況では、ほとんど売れないと思う。

 では、自動車販売台数世界一の座を争ってきた最大のライバルVWの“オウンゴール”で、トヨタは安泰かといえば、そうではないだろう。「好事魔多し」で、HV(ハイブリッド車)の走行時の燃費や排ガス、ひいては使用済みバッテリーの廃棄問題なども厳しく検証されるに違いない。むしろVWの失策を“他山の石”とすべきである。

※週刊ポスト2015年11月6日号

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