◆判断するのが男性か女性かで解釈が分かれることも…
19世紀までの西洋では、エロティシズムやわいせつの表現は、神話的もしくは夢幻的な絵画のみ許容されていたが、19世紀後半にかけてマネらが裸体表現に挑戦し続けた。
ギュスターヴ・クールベの『世界の起源』もその挑戦において語らずにはいられない代表作。ベッドの上で足を開いた裸の女性の陰部がアップで描かれており、発表当時は物議をかもした。しかし今、この作品はフランスのオルセー美術館に所蔵され、トップクラスの人気を誇っている。
「逆にスキャンダルが起きて、論争が起きて、その論争を経れば美術として認められているのが、これまでの美術史の流れです」(名古屋さん)
前出の奥村弁護士は「性欲の興奮・刺激」に注目する。
「神社の男根像などは、古くから地域に根づいた習俗になっています。『信仰に用いる場合はわいせつ性が薄まる』という判例もあります」
一方で判例上、何がわいせつかは、「その時々の社会通念に照らして判断される」というが、奥村弁護士は「社会通念」は個人によって異なると指摘する。
「社会通念という考えはあいまいで時代ごとに変わります。しかも裁判官や警察の担当者の感性や考え方によっても異なる。実際、裁判官や警察官は男性が多いので、男性の性器には寛容ですが、女性の性器については、『コレは性欲を刺激する』と決めつけることもある。現実的に“男目線”になりやすいんです」(奥村弁護士)
昨年7月、わいせつ関連で話題を集めたのは女性漫画家の「ろくでなし子」さん。自らの性器の造形物を3Dプリンターで作成するためのデータを他人に提供したとして逮捕され、現在も公判が続いている。
「春画が性器をモロに描いてもわいせつでないのに、3Dプリンター用のデータがダメというのは理屈が通りません。前述の通り、男性の警察官が担当したから“3D女性器”はダメだったのかもしれません」(奥村弁護士)
※女性セブン2015年11月12日号