「ちきゅう」はこれまでに、南海トラフ地震発生帯や沖縄熱水海底、下北八戸沖、東北・太平洋沖震源域などで掘削調査を行なってきた。JAMSTEC・地球深部探査センター長代理の倉本真一氏は、「『ちきゅう』には3つの目標がある」と語る。
「ひとつは『地震発生メカニズムの解明』です。南海トラフを何度も探査した結果、これまで地震が起きないと思われていた浅い領域の断層も地震や津波の源となり得ることが判明しました。
第2は『生命の限界と起源の解明』です。深海底は高温高圧で酸素が少なく、地球に生物が出現した原初の環境に近い。そのため深海底に生息する微生物の調査は、生命誕生の謎に迫る有益な研究といえます。下北八戸沖の掘削では二酸化炭素を餌にしてメタンを作り出す菌を発見した。これは2000万年前から生存している菌で、培養の研究を現在進めています。エネルギー資源として注目されるメタンハイドレート研究にも役立つ可能性があります」(倉本氏)
そして3つめの目標が前人未到の「マントル調査」だ。
「主にかんらん石からできているマントルは、およそ2億年かけて地球の内部を対流しています。しかし、人類はこのマントルを手に取り確認したことがない。『ちきゅう』の最終的な目標は、このマントルに到達すること。マントルを調査し、それが地球の仕組みや成り立ちにどのような影響を与えているかを解明したいのです」(同前)
海底下7000メートルへ挑戦する「ちきゅう」からの世界を驚かせる成果に期待したい。
写真■JAMSTEC
※週刊ポスト2015年11月20日号