地元スーパーで姿を消し、町外れで発見された男児の遺体からは、精液などは検出されず、指紋等も〈酸素系漂白剤〉で拭き取られていた。防犯カメラからも収穫はなく、付近を虱潰しにあたった坂口らは、4年前の連続強姦事件の犯人が怪しいという意見や、男児が父親に虐待されていたとの証言を得る。捜査方針は実際、父親犯行説に傾くが、驚くことに本書では真犯人を読者にだけ早々に明かしてしまう。それが他でもない、真琴なのだ。

 剣道部主将〈綿貫〉との丁々発止や、〈ちびっこ剣道クラブ〉での〈やさしいせんせー〉の顔。件のスーパーでの真摯なバイトぶりや化学の実験での的確な指示にも好感が持てる分、その真琴が幼子を惨殺した事実を、読者もまた共有しなければならないのがつらい。

「やはり読者が共感できる人物じゃないと読んでもらえませんし、真琴の視点を使うからには、犯行の一部始終も書かざるを得ない。私の息子もまだ3歳なので、本当につらかった……。

 だったらこんな酷い事件、書かなきゃいいんですけど、怖いもの見たさもあるのかな。不妊治療のつらさや、夫が全然あてにならないことは、いつか書いてやる! と思ってきたのでいいとして、ママ友にはやっぱり、勧めにくいかも(笑い)」

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