家族に及ぶのは経済的な影響だけではない。慰安婦記事の誤報問題で揺れた朝日新聞社員の妻がいう。
「保護者会に出ると『ご主人、朝日の記者さんなんでしょ、大変そうね~』と嫌味たらしくいわれてしまう。夫もすごくナーバスになって、フェイスブックもツイッターもやめ、毎年欠かさず出ていた同窓会にも欠席の通知を送っていました」
不祥事で業績が落ちれば、収入減のほか、リストラや転職などの憂き目にあう社員も続出する。だが、転職した後も“悪評”がついて回るというからやりきれない。東京電力の33歳元社員がため息をつく。
「福島原発事故で多額の賠償金を背負ったため、会社側から年収ダウンに応じるか、転職するかの選択を迫られ、家族とも相談して転職を希望しました。
しかし、大手電機メーカーの原発担当として再出発したものの、転職先でも原発事業は低調で、『これも東電のせいだ』と他の社員から冷たい視線を浴びる日々。もちろん社内での出世の可能性はゼロです。東電に残った同僚からは“逃げ出した男”とみなされ、連絡しても会ってもくれない。今は“残って仲間と一緒に再建に尽力したほうがよかった”と後悔しています」
不祥事が原因ではないが、業績悪化でもはや一流企業の面影もないシャープでは、こんなケースまで。
「50歳の親戚男性は、何かにつけて『僕はシャープで働いていて』が口癖でした。身なりも派手で、奥さんがいるのに飲み屋で若い女性を口説いては、その自慢話をしていた。3年前に経営不振が報道された時でも『早期退職制度で辞めて起業する』と景気のいいことをいっていました。
でも退職金のほとんどを離婚した元妻に慰謝料として支払ったあげく、再婚するつもりだった女性にも逃げられて……。結局、事業にも失敗してしまった。今年になって病気で入院しましたが、お見舞いに行った親戚によれば、今は生活保護を受けているそうです」(45歳女性)
これも一流企業の社員であるがゆえの見栄が生んだ悲劇といえなくもない。
※週刊ポスト2015年11月27日・12月4日号