韓国政治に詳しい札幌学院大学教授の清水敏行氏はこう語る。
「現在、朴槿恵政権は歴史教科書の国定化問題を巡って国民から厳しい批判に晒されています。教科書の中身が、父親である朴正熙元大統領時代を韓国が発展した時代と位置づけ、日本の植民地化も朝鮮半島の近代化に一定の役割を果たしたとするものだからです。
この状況下で、反日のシンボルとして有名な靖国神社を攻撃した人物を簡単に引き渡すようなことをしていたとしたら、さらなる反発を受けていたことでしょう」
いわば犯人が自発的に日本に再入国したことで、韓国政府は厄介払いできたといえるのだ。ではその見返りに全容疑者は何を得るのか? 謎は深まるばかりだ。
今また、爆弾犯が伊藤博文を暗殺した安重根のように「愛国人士」として英雄視されている。逮捕された全容疑者が「靖国批判」を口にすれば、韓国国内で礼賛の声がますます盛り上がることは想像に難くない。エスカレートする「反日無罪」にはうんざりするばかりだ。
※週刊ポスト2015年12月25日号