国内

うどんかるた発売延期の裏 伊勢うどん大使がうどん県を取材

発売延期になった「うどんかるた」

 香川県が発売予定をしていた「うどんかるた」が、1本の匿名電話により発売延期になった。なにが起きたのか、どうなるのか。伊勢うどん大使を務める大人力コラムニスト・石原壮一郎氏が県に取材した。

 * * *
 あくまで一般論ですが、どんなことにだって、イチャモンをつけようと思えばつけられます。受け止め方や感じ方は人それぞれですから、何をするにしても、全員がもろ手を挙げて賛成することはないでしょう。少数意見を尊重することは大切ですけど、少数意見に振り回され過ぎるのは、多数意見をないがしろにすることでもあります。

 それはさておき、香川県の「うどんかるた」が、いきなり発売延期になってしまいました。このかるたは、県が年明けうどんの習慣やさぬきうどんの魅力をPRするために企画したもので、全国から読み句を募集。県と有識者で「あ」から「ん」まで全46作品を選定し、12月12日に「全国年明けうどん大会2015inさぬき」の会場で発表されました。

 15日から発売がスタートする予定で、全国のうどんファンは胸を躍らせてその日を待ちかまえていたものです。「今年の正月は、うどんかるたで孫と遊びたいものじゃ」と楽しみにしていたおじいちゃんおばあちゃんもいれば、「うどんかるたで彼女とキャッキャウフフするぞー」と期待をふくらませていたヤングもいたことでしょう。

 ところが、発売前日の14日に、県に1本の電話が入ります。電話の向こうの匿名の誰かは、「つ」の読み句の「強いコシ 色白太目 まるで妻」に対して「良いイメージで受け取らない人もいるのでは」と指摘。自分がどう思ったかではなく、他人の受け取り方を心配しているところがおせっかいだし姑息ですけど、そういう言い方をするのも匿名の指摘の特徴です。

 この句の何がいけないのでしょう。妻に対する深い愛情や、人生を肯定的に受け入れている清々しさが感じられて、とてもあたたかくて幸せな気持ちになれます。電話の主は理由をはっきり述べてはいないようですが、もし「色白太目」を問題視しているとしたら、むしろ色白太目な人に失礼だし、うどん全体に対する冒涜であり挑戦でもあります。

 はばかりながら伊勢うどん大使を務める私としても、うどん仲間として黙ってはいられません。さっそく香川県ことうどん県の県産品振興課に電話して、事の次第や今後の見通しを聞いてみました。

私「このかるたは、このまま幻になってしまうんですか?」

担当者「いえいえ、いったん話し合う時間を取るための延期であって、発売中止ではありません。あらためて作者や選者のご意見を伺って、そのまま発売するか『つ』の札を差し換えるか、なるべく早急に結論を出す予定です」

私「それはよかったです。でも、たった一本の電話で発売を延期するなんて、さぬきうどんさんらしからぬ弱ゴシな対応じゃないでしょうか?」

担当者「けっして、そんなことはありません。強い対応と無謀な対応は違いますので。電話をいただいた段階では、この読み句に疑問を覚える方が少数なのか多数なのか、すぐには判断できませんでした。私どもも、うどんが女性から敵視されるのは本意ではありません。もう一回よくもんで、さらにしっかりした状態で販売できればと思った次第です」

私「弱ゴシなわけではなく、さらにコシを強くするための対応だったと」

担当者「ご存じのとおり、うどんは何度も踏んだりこねたりすることで、生地がミュルフィーユ状になってどんどん強くなっていきます。いや、話がそれてすいません」

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト