山口:僕も基本的には同じ見方。日経平均が瞬間的に1万6000円になっても驚かない。ただ、そこまで下がるとGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が買い支えるから、下がってもそこまで。僕自身、米国やシンガポール、欧州など世界中を転々として感じるのは、為替は1ドル=100円が妥当ということです。120円だと日本の物価が安く感じるし、80円だと海外での買い物が安すぎる。物価的にバランスが取れるのは100円ですよ。
小幡:株高、円安、インフレを目指したアベノミクスは、株高、円安を実現し、結果として日本総悲観論からの脱却に成功した。インフレの実現には失敗したが、インフレはよくないので結果オーライで、手法は100%間違っているが結果は現時点ではベスト、残念ながら100点を与えざるを得ない(笑い)。しかし、悲観論脱却に成功したデフレマインド脱却をひたすら唱える「おまじない」は二度は通用しない。
これからの経済は、失点をせずに守り切る「アウェーの戦い」を強いられ、下手な経済政策は打たない方がマシです。
●ぐっちーさん(山口正洋)やまぐち・まさひろ/投資銀行家。1960年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、丸紅入社。その後、モルガン・スタンレーなど欧米の金融機関を経て、投資会社を設立。M&Aから民事再生、地方再生まで幅広く手がける一方、「ぐっちーさん」のペンネームでブログを中心に活躍。著書に『ぐっちーさん 日本経済ここだけの話』(朝日新聞出版刊)など。
●小幡績 おばた・せき/慶應義塾大学ビジネススクール准教授。1967年千葉県生まれ。東京大学経済学部卒業後、大蔵省(現・財務省)に入省。1999年退職。一橋大学経済研究所専任講師などを経て、2003年から現職。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)委員も務めた。著書に『円高・デフレが日本を救う』(ディスカバー携書)など。
●吉崎達彦 よしざき・たつひこ/双日総研チーフエコノミスト。1960年富山県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、日商岩井入社。米国ブルッキングス研究所客員研究員や経済同友会代表幹事秘書・調査役などを経て2004年から現職。著書に『アメリカの論理』『1985年』『オバマは世界を救えるか』(いずれも新潮社刊)など。ブログ『溜池通信』は貿易統計から米大統領選まで解説する人気サイトだ。
※週刊ポスト2016年1月1・8日号