国際情報

中国の働き掛けを受け韓国で「慰安婦記憶遺産登録論」が過熱

2015年に南京に開館した中国初の「慰安婦記念館」

 ユネスコ世界記憶遺産に南京大虐殺関連史料が登録された。来年(2017年)の「慰安婦関連史料」登録阻止のために何をすべきなのか。

 中国が自国の慰安婦調査に乗り出したのは1990年代後半。1999年、上海師範大学に中国慰安婦問題研究センターが設立されると全国規模で調査が始まり、それに呼応して複数の中国人元慰安婦が名乗りを上げた。同時に、中国各地の档案館でも戦時中の文献が精査され、慰安婦関連の史料が次々と公表されるようになった。そんな中国が外交戦のパートナーとしてもっとも”期待”を寄せているのが韓国だ。

 中国は2014年1月、韓国の主要メディアを吉林省の档案館(公文書館)に招き、同館が所蔵する旧日本軍作成の慰安婦関連記録を公開。「慰安婦の強制動員を裏付ける決定的史料」として国際社会に喧伝し、後にこれらをユネスコに提出したと見られている。

 在韓ジャーナリスト・藤原修平氏が語る。

「中国は档案館で2013年、『独島(竹島の韓国での呼称)は韓国領』と明記した1947年の外交文書を公開し、韓国側に急接近しました。中国側は慰安婦問題研究の中核である韓国『東北アジア歴史財団』とも蜜月関係にあり、慰安婦史料の拡充に向け連帯しています。中韓双方の記録物が充実すれば国際社会に客観性を主張しやすくなり、ユネスコ登録への道が開けると考えているのでしょう」

 こうした中国の働き掛けを受け、韓国では慰安婦史料のユネスコ登録推進論がヒートアップ。元慰安婦の福祉や記念事業を担当する韓国女性家族部の金姫廷長官は2015年3月、国連「婦人の地位委員会」に出席し「世界記憶遺産にはホロコーストやアメリカの奴隷制度のように、繰り返してはならない史実も登録されている。日本軍の慰安婦史料も登録されるよう積極的に推進する」と熱弁した。

 続く4月には、対日関係などの外交分野を担当する韓国国会外交統一委員会が、元慰安婦の故・金学順氏が日本軍の強制連行を実名告白した8月14日を「慰安婦被害者追悼日」に指定するよう国連に求める決議案を上程している。

※SAPIO2016年2月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

9月6日から8日の3日間、新潟県に滞在された愛子さま(写真は9月11日、秋篠宮妃紀子さまにお祝いのあいさつをするため、秋篠宮邸のある赤坂御用地に入られる様子・時事通信フォト)
《ますます雅子さまに似て…》愛子さま「あえて眉山を作らずハの字に落ちる眉」「頬の高い位置にピンクのチーク」専門家が単独公務でのメイクを絶賛 気品漂う“大人の横顔”
NEWSポストセブン
川崎市に住む岡崎彩咲陽さん(当時20)の遺体が、元交際相手の白井秀征被告(28)の自宅から見つかってからおよそ4か月
「骨盤とか、遺骨がまだ全部見つかっていないの」岡崎彩咲陽さんの親族が語った “冷めることのない怒り”「(警察は)遺族の質問に一切答えなかった」【川崎ストーカー殺人】
NEWSポストセブン
最新機種に惑わされない方法とは(写真/イメージマート) 
《新型iPhoneが発表》新機能へワクワク感高まるも「型落ち」でも充分?石原壮一郎氏が解説する“最新機種”に惑わされない方法
NEWSポストセブン
シーズンオフをゆったりと過ごすはずの別荘は訴訟騒動となっている(時事通信フォト)
《真美子さんとの屋外プール時間も》大谷翔平のハワイ別荘騒動で…失われ続ける愛妻との「思い出の場所」
NEWSポストセブン
選手会長としてリーグ優勝に導いた中野拓夢(時事通信フォト)
《3歳年上のインスタグラマー妻》阪神・中野拓夢の活躍支えた“姑直伝の芋煮”…日本シリーズに向けて深まる夫婦の絆
NEWSポストセブン
学校側は寮内で何が起こったか説明する様子は無かったという
《前寮長が生徒3人への傷害容疑で書類送検》「今日中に殺すからな」ゴルフの名門・沖学園に激震、被害生徒らがコメント「厳罰を受けてほしい」
パリで行われた記者会見(1996年、時事通信フォト)
《マイケル没後16年》「僕だけしか知らないマイケル・ジャクソン」あのキング・オブ・ポップと過ごした60分間を初告白!
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン
『東京2025世界陸上』でスペシャルアンバサダーを務める織田裕二
《テレビ関係者が熱視線》『世界陸上』再登板で変わる織田裕二、バラエティで見せる“嘘がないリアクション” 『踊る』続編も控え、再注目の存在に 
NEWSポストセブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《ベビーカーショットの初孫に初コメント》小室圭さんは「あなたにふさわしい人」…秋篠宮妃紀子さまが”木香薔薇”に隠した眞子さんへのメッセージ 圭さんは「あなたにふさわしい人」
NEWSポストセブン
試練を迎えた大谷翔平と真美子夫人 (写真/共同通信社)
《大谷翔平、結婚2年目の試練》信頼する代理人が提訴され強いショックを受けた真美子さん 育児に戸惑いチームの夫人会も不参加で孤独感 
女性セブン
海外から違法サプリメントを持ち込んだ疑いにかけられている新浪剛史氏(時事通信フォト)
《新浪剛史氏は潔白を主張》 “違法サプリ”送った「知人女性」の素性「国民的女優も通うマッサージ店を経営」「水素水コラムを40回近く連載」 警察は捜査を継続中
NEWSポストセブン