書評では「ディストピア(“ユートピア=理想郷”の逆)小説」と書かれるが、自分では「ユートピア」のつもりで書いたという。
「私は今36才で、友達には子供ができなくて不妊治療をする人や、子供がほしくて、とにかく結婚したほうがいいか、卵子を保存したほうがいいのか悩む人もいます。もし、そういう苦しみのない世界があったら、家族とは違うシステムで繁殖できる体や技術があったとして、まっさらな状態からやり直すとしたら、私たちはどういう繁殖のしかたを選んで生きていくだろう、と創造した世界です。書きながら、技術という意味ではすでに自分たちはそういう世界にいることも考えていました」
村田さんの小さいときの口癖は「本当の本当」で、本当のことはなんだろうと考える子供だった。
「うちは貧乏なのに、どうして親は私にご飯を食べさせてくれたり寝床を与えてくれたりするんだろうって不思議でした。家族だからだよ、ってふんわり納得させられそうになるけど、その奥にある本当のことを知りたかったですね」
デビューして10年以上たつが、今も週に3回、コンビニのバイトを続けている。
「家の中にずっといると、空想世界に閉じこもってしまって小説という現実的な行為になかなか向き合えず、小説が全然進まないんです。『土用の丑』とか季節を感じるのもコンビニですし、人間のまともな世界というのをそこからもらっているという意味でも、自分にとって必要なんだと思います」
(取材・文/佐久間文子)
※女性セブン2016年2月11日号