ビジネス

トヨタも舌巻くスズキの新興国戦略 先行者利益は垂涎の的

スズキの鈴木俊宏社長(左)はトヨタとの提携をどう進めていくのか

 長らく軽自動車の販売競争で抜きつ抜かれつの攻防を繰り広げてきたダイハツ工業とスズキだが、その戦いに終止符が打たれる可能性が出てきた。ダイハツに51.2%出資するトヨタ自動車が完全子会社化を計画するとともに、スズキとも新たに資本提携を視野に入れた交渉をしていると報じられたからだ。

 トヨタ陣営がそこまでしてスズキに触手を伸ばす理由は何なのか。ジャーナリストの福田俊之氏がいう。

「近年、軽自動車市場は価格や維持費の安さ、燃費性能の飛躍的な向上などによって売れ行きは絶好調でしたが、昨年4月から軽自動車税が引き上げられたことが影響し、2015年の販売台数は前年比で10%近く減少して約505万台と苦戦を強いられました。

 特にダイハツは台数シェアこそトップになったものの業績は低迷。2015年9月中間決算では自動車メーカー8社のうち唯一、減収減益に沈むなど独り負けでした。そこでトヨタはこのまま国内メーカー同士で消耗戦を続けるくらいなら、スズキとも手を組んで軽を含めた小型車のグローバル展開を強化したほうが得策と考えたのでしょう」

 一方のスズキも、軽自動車だけでは生き残れないという危機感があるのは事実だろう。

「国内は人口減少や少子高齢化でクルマ離れが進んでいるうえに、中長期的には軽自動車の枠組みを撤廃して自動車税を一本化させたい国の思惑もある。

 スズキは“食い扶持”を失われないために小型車の開発も積極的に行っているが、軽以外のクルマでは世界の列強と互角に戦っていくのは難しい。そこで技術的な面も含めて他社グループとの連携も常に模索してきた」(経済誌記者)

 当サイトでは昨年7月、スズキが業務資本提携を結んでいた独VW(フォルクスワーゲン)と“破談”になった際、自動車ジャーナリスト・井元康一郎氏のコメントを交えて「次なる提携先としてトヨタもあり得る」と報じたが、まさにその通りの展開になった。再び井元氏がいう。

「いま、スズキはクルマの基本構造を1から見直し、車体の強度を高めながら極限まで重量を減らす『次世代軽量プラットフォーム(車台)』に取り組んでいます。そうして出来上がった軽自動車の『新型アルト』は他社も舌を巻くほど軽量化に成功したばかりか、小型車の『ソリオ』でも従来モデルより100kgも減量させました。

 スズキの小さなクルマづくりにかける情熱や技術力、コスト削減を含めた最適化のスピードはダイハツを抱えるトヨタといえども学ぶところは多い。今後、協力関係が結ばれればトヨタの小型車が新興国市場で存在感を高める大きなチャンスになるでしょう」

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン