国内

日本は今こそ「台湾の味方」だと世界に発信することが重要

台湾総統選に勝利した蔡英文氏 共同通信社

 蔡英文氏が勝利した台湾の総統選は、早くも国際関係に大きなうねりをもたらしている。蔡氏は馬英九・現総統とは一線を画し、中国と距離を置く姿勢を貫いている。

 そうした中で、まず注目すべきは米中関係である。オバマ政権は表向きには中国を刺激しないよう、対中政策を変更する方針は見せていない。だが、産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏はこう解説する。

「アメリカの一部からは、今回の蔡氏の勝利により米台関係、そして米中関係まで変えるべきだという意見が出始めている。たとえばジョン・マケイン上院議員は、台湾との関係を中国との外交カードに使うべきと主張している。

 国防総省で中国部長を務めたダン・ブルーメンソール氏は、今回の選挙は1996年に生まれた世代が選挙権を持っていて、彼らの中には『一つの中国』という言葉が浸透しておらず、むしろ若い世代を中心に『自分たちは台湾人』という意識が高まっていると指摘している。アメリカにとっては、それが中国を抑制するためのカードになりうる」

 実際に、台湾の国立政治大学が2015年7月に発表した調査では、自分が「台湾人」だと考える人が59%と過去最高水準にのぼり、「台湾人であり中国人」が33.7%、「中国人」が3.3%と減っているという。2014年に起きた「ヒマワリ学生運動」も、中国との貿易協定の発効に反対する若者たちが起こした、「中国との接近」を警戒する動きだった。

 アメリカの元国連大使のジョン・ボルトン氏も総統選後にウォール・ストリート・ジャーナル(1月18日付)に寄稿し、その中で、中国の暴走を止めるための手段として〈台湾という切り札〉を使うことを次のように提言している。

〈米新政権は台湾の外交官を正式に国務省に招くことから始め、(中略)台湾総統を国賓として米国に招くことができる。さらに、米高官を台湾に派遣して公用を行い、最終的には完全な外交的承認を与えることも可能だ。中国政府首脳陣は、こうしたやり方に愕然とするだろう〉

 中国側も、今のところ公式には蔡氏を批判したり台湾政策を大きく変えたりする動きはない。しかし、1月下旬になって蔡氏のフェイスブックには中国大陸からと見られる攻撃的な書き込みが殺到するなど、中国は蔡氏の政権運営の一挙手一投足を注視している。フェイスブックへの書き込みは少なくとも4万件にのぼり、その中には「台湾は歴史上も中国の一部であり、分割できない」といった蔡氏を牽制する記述が多く見られた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン