◆「日本は台湾を支えて欲しい」
私は昨年夏、本省人(もともと台湾に住んでいる台湾人)が多く、民進党の地盤でもある南部の台南と高雄を訪れた。その折、
「次の選挙は重要だ。このままでは、台湾は中国になってしまう」
そんな話を数多く聞いた。
今回、台北では、投票を終えて出てきた人たちから、こんな話を聞くことができた。
「台湾は親中より親米でいくべきです。台湾は台湾。このままでは、台湾は中国に呑み込まれてしまいます」(32歳の本省人・男性)
「(民進党の)陳水扁が総統の時は、立法院の議席が足らず、思うような政策が実現できなかった。国民党は、企業と結託して大型の建設工事をやって来たし、その時、貴重な史蹟を保存することも考えない。飲食店経営の父は今も国民党支持ですが、私は民進党に是非勝って欲しいです」(情報工学を学ぶ24歳の本省人・男性)
一方、外省人夫婦(共に36歳)はこんなことを口にした。
「中国との経済的パイプは大切にすべきです。お互いがひとつの中国を認め合った“92年コンセンサス”を支持します。もちろん国民党の朱立倫候補に投票してきました」
日本に住んだ経験もある民進党支持の自営業の男性(52)と、その妻(48)は、こう言った。
「中国には反国家分裂法があります。台湾が独立への動きを見せようものなら、すぐにこれが発動されて軍事侵攻されるでしょう。しかし、私はステップ・バイ・ステップだと考えています。台湾はすぐに(独立を)達成できなくてもいいですよ。もう中国は人件費が低かった時代とは違う。かつてより、メリットは小さくなっているし、それに中国への投資はこっちの技術が盗まれるという危険もある。台湾が経済的に中国にのめり込む必要はもうありません」
夫がそう言えば、妻はこんな日本への期待を語った。
「日本には、もっと積極的になって欲しいですね。台湾だけでなく、アジアの国々はみんな日本にもっと頑張って欲しいと思っています。日本は謙遜なんかする必要はありません。自分がアジアのリーダーであることを自覚して台湾を支えて欲しいです」
経済優先と民進党への不安ばかり口にしていた前回とは、全く異なる姿勢が大勢だった。それだけ台湾が「岐路に立っている」ということだろう。さらに「台湾人は台湾人」という意識が明らかに強くなっていることが印象的だった。