国際情報

日韓合意「不可逆的」は「効果なし」と産経・加藤達也氏

「慰安婦合意」に韓国内では批判も Lee-Jae-Won/AFLO

 実に500日。執筆したコラム記事が「朴槿恵大統領への名誉毀損」にあたるとして起訴された産経新聞の加藤達也・前ソウル支局長は、17か月にわたり法廷闘争を繰り広げた。

 昨年末ようやく無罪が確定したが、記者の仕事と朴政権との「500日戦争」を通じて韓国を“体感”した加藤氏は、慰安婦問題に関する日韓合意について懐疑的だ。そして、長く韓国を見てきた作家の井沢元彦氏も、「また蒸し返してくるのではないか」と懸念を示す。韓国に通じた2人が日韓関係の行方を語り合った。

井沢:加藤さんの無罪判決と年末の慰安婦問題に関する日韓合意は、両国の関係の改善を求めるアメリカの意向を受けたという意味では同じ流れにあると考えています。

「最終的かつ不可逆的」とはいうものの、すでに韓国政府は民間団体の設置したものだから日本大使館前の慰安婦像は撤去できないと言い出している。これで本当に合意といっていいのか、疑問です。

加藤:同感です。朴政権は撤去できなかった場合の言い訳をしているように見えます。

 慰安婦像が撤去されなければ、日本政府は元慰安婦支援のための10億円の拠出はしないでしょう。

井沢:韓国が慰安婦像を撤去しないと日本は10億円を出さない。すると韓国は「日本は約束を守らない」と責めてくるでしょうね。

加藤:ただ、朴政権が続く今後2年間は、いままでのような告げ口外交をしたり、慰安婦問題を蒸し返したりすることはないと見ています。

 実際、韓国政府は年明けに日本大使館前で行われた日韓合意に反対する無届けデモに参加した大学生の捜査に踏み切りました。これまでは大使館前の慰安婦問題のデモは聖域化していて、よほど過激な抗議行動でなければ制限されることもなかった。

井沢:ある意味で「言論の自由が保障される国」だったんですね(笑)。

加藤:そうなんです。ただし朴大統領が任期を終える2018年2月以降は状況が大きく変わる可能性があります。慰安婦問題を名目に反日的な世論を作り出している挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)が、日韓合意に強硬に反対している。挺対協が引き続き力を持った場合、2年後に誕生する新政権が朴政権の合意には与しないという立場をとる可能性は十分にある。

井沢:それを防ぐために「不可逆的」という文言を入れた。日本はかなり譲歩して慰安婦に旧日本軍の関与を認めた河野談話の継承ともとれるような発言をした。そして、今後慰安婦問題を蒸し返さないという言質を取ったわけです。

加藤:でも残念ながら効果はないと思います。

関連記事

トピックス

(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト