ライフ

歓楽街に多い「リアル深夜食堂」 料理は手間と愛情に溢れる

「食堂おさか」のきんめだい干物定食

 24時間営業の飲食店は、いまや珍しくなくなった。夜中に腹が減れば、チェーン展開のファミレスならどの駅前にだってあるし、牛丼店やラーメン店に駆け込むことだってできる。

 しかし、滋味にあふれる手作りの料理を夜中に味わおうとすれば、それはなかなか難しい。コミック『深夜食堂』(小学館)がドラマ化・映画化され大ヒットした背景には、「こんな店が近くにあれば」という多くの人々の憧れがあったことは想像に難くない。

「リアル深夜食堂」と呼べる店は、特に昼夜なく働く人々が多い都心の歓楽街に多い。そしてそれらの店が提供する料理は、いずれも手間と愛情にあふれている。

 たとえば、東京・三軒茶屋の「食堂おさか」の誠実さは、定食に添えられたすまし汁を一口すすればよくわかる。鼻腔に立ち上る鰹節の香り。厳選された味噌を好みの分量で溶かすと、素晴らしい味噌汁へと変化する。

 東京・神保町の「深夜料亭 あかり」には、確たるメニューは存在しない。基本は旬の素材を使ったコース料理のみだ。しかし、今の気分やお腹の空き具合を伝えれば、それに合わせてメニューを見繕ってくれる。主人の確かな料理の腕とこの「オーダーメイド感」は、連夜ファンを惹きつけている。

「定番メニュー」で勝負する店もある。東京・「赤坂一龍 別館」の『雪濃湯(ソルロンタン)』は、その代表格。赤坂通なら誰もがシメに選んだことがある定番の味だ。

 牛骨と牛ほほ肉から丁寧にとられたスープは、その優しさが体に染み渡る。非常にあっさりした味かと思いきや、卓上の塩を一振りすると濃厚な肉の旨みがあふれ出す。昨年逝去した料理研究家・岸朝子氏が生前このスープを飲み「塩という調味料の偉大さがわかる」と語ったというが、その意味が実感できる一杯だ。

 オリジナリティあふれる「深夜食堂」には心安らぐ温もりがある。

撮影■河野公俊

※週刊ポスト2016年2月19日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

第一子を出産した真美子さんと大谷
《デコピンと「ゆったり服」でお出かけ》真美子さん、大谷翔平が明かした「病院通い」に心配の声も…出産直前に見られていた「ポルシェで元気そうな外出」
NEWSポストセブン
花の井役を演じる小芝風花(NHKホームページより)
“清純派女優”小芝風花が大河『べらぼう』で“妖艶な遊女”役を好演 中国在住の実父に「異国まで届く評判」聞いた
NEWSポストセブン
2000年代からテレビや雑誌の辛口ファッションチェックで広く知られるようになったドン小西さん
《今夏の再婚を告白》デザイナー・ドン小西さんが選んだお相手は元妻「今年70になります」「やっぱり中身だなあ」
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「王子と寝ろ」突然のバス事故で“余命4日”ののち命を絶った女性…告発していた“エプスタイン事件”【11歳を含む未成年者250名以上が被害に】
NEWSポストセブン
人気シンガーソングライターの優里(優里の公式HPより)
《音にクレームが》歌手・優里に“ご近所トラブル”「リフォーム後に騒音が…」本人が直撃に語った真相「音を気にかけてはいるんですけど」
NEWSポストセブン
ナンバープレートを折り曲げ集団走行する「旧車會」=[福岡県警提供](時事通信フォト)
《各地で増える”暴走”》駐車場を勝手に旧車會の集合場所とされた飲食店主「100台以上も…他のお客さんが入って来られん」と怒り
NEWSポストセブン
世界中を旅するロリィタモデルの夕霧わかなさん。身長は133センチ
「毎朝起きると服が血まみれに…」身長133センチのロリィタモデル・夕霧わかな(25)が明かした“アトピーの苦悩”、「両親は可哀想と写真を残していない」オシャレを諦めた過去
NEWSポストセブン
キャンパスライフをスタートされた悠仁さま
《5000字超えの意見書が…》悠仁さまが通う筑波大で警備強化、出入り口封鎖も 一般学生からは「厳しすぎて不便」との声
週刊ポスト
事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
エライザちゃんと両親。Facebookには「どうか、みんな、ベイビーを強く抱きしめ、側から離れないでくれ。この悲しみは耐えられない」と綴っている(SNSより)
「この悲しみは耐えられない」生後7か月の赤ちゃんを愛犬・ピットブルが咬殺 議論を呼ぶ“スイッチが入ると相手が死ぬまで離さない”危険性【米国で悲劇、国内の規制は?】
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン