「ケンタッキー州ルイビル大学のマーチン博士のグループは、ステージ4Aの膵がん200例にこの治療を実施しました。50例で腫瘍が縮小し、手術可能となり、残り150例は抗がん剤併用で延命が得られています。
平均生存期間は、抗がん剤単独に比べて約2倍の24か月に延びています。局所の再発は3%で、ナノナイフ治療は膵臓にとどまっているがんを強く抑える効果(局所制御能)があることも実証されました。そのためアメリカでは、膵がん治療に使われる例が多くなっています」(森安主任教授)
膵がんのナノナイフ治療は、10日から2週間程度の入院を要する。通電範囲では、がん細胞と周辺の正常細胞も死滅するため、胃や腸の粘膜に潰瘍が生じたり、膵炎が起きたりするからだ。これらの回復のため安静と絶食が必要で、肝がん治療よりも若干入院期間が長い。欧米では肺がん、前立腺がん、腎がんなどの治療に用いられており、今後は日本でも導入されることが期待されている。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2016年2月19日号