シンジャール郊外の村。虐殺されたヤジディ教徒の遺骨が多数


◆25人の男性が殺された

 ISに虐殺されたヤジディ教徒の遺骨が見つかったという知らせを受けた私は、市内から東へ車で20分の位置にあるハマダン村に向かった。この現場では少なくとも25人の男性が殺されたという。

 荒涼とした大地に、遺骨と衣類が広範囲に散乱していた。ISはここにもIED(簡易爆弾)を仕掛けており、遺体の確認作業は困難になっている。そんな中、身内を殺害された遺族が集まり掘り出した遺骨を一箇所に集めていた。

 ボロボロの衣服のポケットから出てきた身分証明書を見つけ涙を流す男性。ここで兄を殺害されたという20歳のサラームは周囲を歩き回り兄の遺品を探していた。サラームは兄の仇を討つためにペシュメルガに入隊を決意した。ペシュメルガの中には家族を失った10代の少年兵も多く、私も取材中に2人の少年兵と出会った。

 街の中心地から車でわずか15分ほど南下するとペシュメルガの最前線基地がある。強風に晒されて凍てつく壕で見張りをする若いヤジディの兵士に話を聞いた。十分な武器もなく報酬も滞っている中、最も危険な最前線で戦う理由とは何か?

「今もなお3000人を超えるヤジディ教徒が奴隷として囚われています。彼らが全員、解放されるまでは戦い続けます」

●横田徹(よこた・とおる)報道カメラマン。1971年茨城県生まれ。1997年のカンボジア内戦からカメラマンとして活動を始め、世界の紛争地を取材。アフガニスタン、イラク、シリアなど過去10年以上に及ぶ戦場取材をまとめた近著『戦場中毒 撮りに行かずにいられない』(文藝春秋)が話題。

※SAPIO2016年3月号

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