事件後、川崎市は、学校にスクールカウンセラーを配置したり、電話相談窓口を開設したり、夜間パトロールを始めるなど対策を講じた。でも、子供たちが変わったのは、そうした“建前の措置”があったからではない。彼らは、この1年間、“上村くんの死”について自分たちなりに思いを巡らせ、自分たちなりに答えを見つけようとあがいていた。

 2月上旬の夕暮れ、上村くんが遊んでいた公園を訪れた。友達と、大好きだったバスケットボールを楽しんでいた場所だ。そこに集まっていたのは4人の少年。女性セブン記者が、上村くんの事件について思っていることを聞きたいと話しかけると、「はぁ~?」と言ったり、「話聞かせて?」と口真似をするなどしてからかってきた。

 あきらめて他の子供を探していると、先ほどの4人組と鉢合わせ。彼らは「まだ探してんのかよ」と呆れ気味に声をかけてきた。

「話聞きたいけど、私も中学生だったら無視しちゃうと思う」と記者が言うと、少年たちは「でしょ!」と笑う。そして「やれやれ」とでもいうような口ぶりで、ぽつり、ぽつりと話し始めた。

「うちも母親しかいなくて、カミソンと同じ。小さい頃に離婚しているから、父親の顔も覚えていない。でも、カミソンのことがあって、前はご飯を食べてるときもずっとスマホいじってたけど、前よりLINEの回数とか減らしている。

 まぁ、だからといって親と話しながらご飯食べるわけじゃないし、会話が増えているわけじゃないけど。母ちゃんと姉ちゃんが話してるだけ。ただ、前と違って何か聞かれたら“うるせえ”って思いながらも答えたりしてる。全部答えると調子に乗るから少しだけだけどね」(14才男子)

 事件について母親に話すことはないし、聞かれたこともない。表面上は家族関係に変化はない。

「でも、カミソンが死んで、人ってあっという間に死ぬんだな、と思った。だから今は、働きながら頑張って育ててくれている母ちゃんに感謝する気持ちが、なんとなく出てきたかな」

※女性セブン2016年3月3日号

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