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無名な人の現実迫ったノンフィクション『東京湾岸畸人伝』

【著者に訊け】山田清機さん/『東京湾岸畸人伝』/朝日新聞出版/1728円

【本の内容】
 誰もが知っている有名人はひとりも出てこない。山田さんが執拗に話を聞くのは、東京湾岸で生活をしている6人の無名の人。懸命に生きている彼らを、優しい視線で書き綴っていく。決して安定した生活ではなく、人間の弱さもさらけ出す彼らが、山田さんに漏らす仕事に対する真っ直ぐな姿勢。挫折を知り、年を取って初めてわかる人生の嘆息と希望を感じる一冊だ。

 東京に長く住む人にとっても、海の見える湾岸地域は、あまり行く機会のない異界のような場所ではないだろうか。そんな東京湾岸に足を踏み入れた山田清機さんは、6人の男に出会う。築地市場のマグロの目利き、横浜港で船の積み荷の揚げ降ろしをしてきた沖仲仕、久里浜の病院でアルコール依存症と闘うデザイナー…。彼らの激しすぎる人生の物語を面白く読ませてくれるのが、このノンフィクションだ。

 山田さんは昔から東京湾岸の風物にひかれていた。

「浜松町から羽田に向かうモノレールに乗ると、倉庫や得体の知れない船、そこで働く人たちが見える。内陸に住んで、郊外から都心のオフィスに通う人とは違う人たちがいるんじゃないかと思ったんです」

 予想は的中した。そこには知られざる仕事の風景や人生のドラマが眠っていたのだ。

 築地市場の目利きは歴史ある大店をやめて小さな店に移り、東京やロサンゼルスの一流寿司店が使うマグロをセリ落とす。高級な部位なら何でもいいのではなく、寿司屋によって脂の乗り、きめの細かさなど、握りやすさの好みがあるそうだ。わずか数秒のセリの間に、何軒もの得意先の好みを考えて落札する。

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