国際情報

金正恩の度重なる核暴走に韓国で「20年後の後悔」噴出

「ロケット」打ち上げを見守る金正恩(2月7日) 共同通信社

 北朝鮮が「水爆」と称する4回目の核実験や長距離ミサイル発射などで国際社会に軍事的威嚇を強めている。今年5月に予定されている36年ぶりの朝鮮労働党大会開催に向けた金正恩体制の“業績作り”と見られるが、北朝鮮の軍事的暴走を目の当たりにし、韓国の識者の間では「あの時、韓国がイエスと言っていたら現在の事態は無かったかもしれない……」と過去を悔やむ声が聞かれる。
 
 1994年6月の北朝鮮をめぐる“核危機”に際し、米軍が計画した対北朝鮮軍事行動に韓国が「ノー」といって反対した話だ。時は金日成の晩年で、米国はクリントン大統領、韓国は金泳三大統領。北朝鮮の核疑惑が初めて国際問題化した時だ。
 
 昨年11月に亡くなった金泳三元大統領(在任1993~1998年)は生前、「1994年の核危機に際し、自分は米国が計画していた北朝鮮に対する軍事行動を阻止し国を戦争から救った」と自慢していた。当時、米軍は北朝鮮の寧辺地域にある核施設を破壊する軍事行動を計画した。その時のことが金泳三回顧録には次のように書かれている。
 
「6月17日未明、電話をしてきたクリントン大統領を厳しく追及した。自分が大統領でいる限り韓半島を戦場にすることは絶対にダメだ。あなた方は飛行機で空襲すれば済むかもしれないが、北は即時、休戦ラインから南の主要都市を一斉に砲撃するだろう。戦争は絶対にダメです。自分は歴史と国民に対し罪を犯すわけにはいかない、と……」
 
 この時の朝鮮半島の“核危機”は、カーター元大統領の平壌訪問と「米朝ジュネーブ協定」で回避された。米国の軍事的脅威を金日成が恐れ、慌てた結果だった。
 
 この協定では北朝鮮の核開発凍結と北朝鮮に対するエネルギー支援を約束した。米韓日など国際社会は見返りとして北朝鮮で原発(軽水炉)建設工事まで始めた。しかし結果的にはその後、北朝鮮の核疑惑が再燃し、協定は反故となった。
 
 協定の裏で北朝鮮は密かに核開発を続けていたのだ。そして核実験を繰り返したあげく「核保有宣言」にまでいたった。米朝ジュネーブ協定はもちろん、その後の「6者協議」も核開発阻止にはまったく役に立たなかったのだ。この二つとも結果的には北朝鮮の核開発推進の隠れミノだったことになる。
 
 それだけに「20年前のあの時、断固として北の核施設を破壊しておけばこんなことにはならなかったかも……」という声が出る。韓国の識者によると最近、ある国際セミナーでクリントン時代の米国防総省OBが同じような感想をもらしていたという。

関連記事

トピックス

(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト