国内

山口組元顧問弁護士 「ヤクザはマフィアと違い倫理観ある」

山之内幸夫元弁護士

 山口組の守護神──そう呼ばれた男が、分裂騒動の最中、静かにその役を降りた。山之内幸夫元弁護士、70歳。山口組の顧問弁護士として名を馳せ、極道の世界の内幕を描いたベストセラー『悲しきヒットマン』の著者としても知られる。なぜ彼は、正義とは対極の男たちを守り続けてきたのか。

 * * *
「ヒットマン」っていうのは僕が『悲しきヒットマン』を書いたときに世に知られるようになった言葉なんですけど、抗争のとき捨て身で相手の組に乗り込む人のことです。そういう人の心情や背景は、刑事弁護を引き受けなければ絶対わからなかったと思います。

 ヤクザが標榜する「任侠」や「仁義」は、計算に合わないバカなことをする精神作用のことでしょうね。ヒットマンなんて、自分の人生はそこで終わるわけですから。個人的な恨みではなく、義のために体で返すわけです。

 マフィアと違って任侠道を掲げるヤクザは、倫理観のようなものがある。恐喝はいいけど、強盗はいけないとかね。オレオレ詐欺のような年寄りイジメもしない。もともとは薬物も扱わなかったんです。

 しかし、1991年に「暴力団対策法」が制定されてからは、「暴力団排除条例」もでき、ヤクザは簡単に捕まるようになった。女房や息子の名前を借りてマンションや車を買っただけでパクられる。

 刑事法に関しては、法の平等なんてないに等しい。ヤクザも潜在化せざるをえません。そうすると歯止めが利かなくなり、稼げれば方法は何でもいいとなる。だから、薬物売買に手を染めるんです。

 ヤクザというと、弱い者イジメをして、派手な生活してると思われがちですが、今のヤクザは、そんな豪勢じゃないですよ。もともと行き場も仕事もない連中が集まってるんですから。見栄を張って、いい生活をしているように見せてるだけなんです。

 僕もヤクザが被害者だとまでは言いません。ヤクザはやっぱり犯罪者。シノギのために悪いこと、いっぱいしてますもん。ただ、落ちこぼれた人間の受け皿、敗者復活戦になっている部分は間違いなくあるんです。百年も続いている組織なんて、世界でもそうないですよ。それは厳然たる事実です。

 嫌だったらヤクザを辞めればいいと言いますが、辞められへんからやってるんです。行くとこ、ないですもん。

●やまのうち・ゆきお/1946年、大阪府出身。早稲田大学法学部卒。1972年司法試験合格。1984年頃より山口組顧問弁護士に。1988年、『悲しきヒットマン』を上梓しベストセラーに(のち映画化)。2014年末、建造物破損の教唆の罪で起訴され、2015年末、有罪判決確定。弁護士資格を失う。

※SAPIO2016年4月号

関連記事

トピックス

岸信夫元防衛相の長男・信千世氏(写真/共同通信社)
《世襲候補の“裏金相続”問題》岸信夫元防衛相の長男・信千世氏、二階俊博元幹事長の後継者 次期総選挙にも大きな影響
週刊ポスト
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
女優業のほか、YouTuberとしての活動にも精を出す川口春奈
女優業快調の川口春奈はYouTubeも大人気 「一人ラーメン」に続いて「サウナ動画」もヒット
週刊ポスト
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
女性セブン
今回のドラマは篠原涼子にとっても正念場だという(時事通信フォト)
【代表作が10年近く出ていない】篠原涼子、新ドラマ『イップス』の現場は和気藹々でも心中は…評価次第では今後のオファーに影響も
週刊ポスト
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン