ライター時代と比べ、がくっと収入は減ったそうだが、その後も着実にキャリアを積み重ねていく。中東に生まれた女性の過酷な人生を描く衝撃のノンフィクション『生きながら火に焼かれて』や、北野武が自らを語った『Kitano par Kitano』などの話題作も手がけた。
そんな松本さんのパートナーは、ミシュランの二つ星レストラン「ドミニク・ブシェ」のシェフ、ドミニク・ブシェ氏である。仕事を持ちつつ、レストランでは「マダム・ブシェ」として客を迎え、夫に代わって交渉にあたることもある。パリと東京を行き来する多忙な日々だ。
ホテル・ド・クリヨンの総料理長時代に知人の作家に紹介されたブシェ氏と親しくなったのはパリに移ってから。恋人になっても2、3年は、週末だけ一緒に暮らす「ソロ」というスタイルを選んだ。
その後しばらくは事実婚で、結婚したのは昨年のことだ。
「一応、新婚です(笑い)。でも長く一緒に暮らしているので、全然、そんな感じじゃない。すごいけんかもしますよ」
松本さんはそう言うが、エッセイにも書いているように、愛称で呼んだり、相手を喜ばせようとサプライズをしかけたり、パリのカップルは、カップルであり続ける努力を惜しまない。日本の中高年夫婦とは随分違う気がする。
「最後の一日まで彼と一緒にいたい。その気持ちが強いからこそ、ひとりになったときに自分で立っていられる、そんな自分でありたいな、と思います」
松本さんの初めての単著となる『それでも暮らし続けたいパリ』には、日本と比較したパリの不思議、面白さがたっぷりと綴られている。
撮影■政川慎治
※女性セブン2016年4月14日号