芸能

上條恒彦 もうちょっと下手に歌えないかと頼まれた理由

上條恒彦が歌手・役者について振り返る

 役者を目指しながら歌手に転身した上條恒彦は、歌った曲が大ヒットし、ドラマ主題歌もまかされることとなった。主題歌を歌ったことから役者の仕事も始まった当時の出来事について上條が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏が綴った週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』からお届けする。

 * * *
 一度は役者の道を諦めて歌手となった上條恒彦は1971年『出発の歌』が大ヒット。翌年の『だれかが風の中で』は市川崑監督のテレビ時代劇『木枯し紋次郎』(フジテレビ)の主題歌となり、上條は短い出番ながらも同作にゲスト出演している。

「市川先生と初めてお会いしたのは『だれかが風の中で』のレコーディングの時でした。

『どこかでだれかが』と歌って、ブースへいくと、聴いていた市川先生が『上條ちゃん、もうちょっと下手に歌えないか』と言うんですよ。その時、僕は監督の言わんとしていることをすぐに理解することができました。

 初めてのテレビドラマの主題歌ということもあって、力こぶ作って朗々と立派に歌っちゃったんですね。でも、先生は『紋次郎はそんな立派じゃないんだよ』と言っておられるんだと気づきました。それで歌い方を変えたら、『よし、それでいこう』と仰ってくださって。

 出演したのは、歌がヒットしたのでレコード会社の宣伝部が『上條さん、ゲストに出なくちゃ』って。みんなが楽しみにしているから、断るわけにはいきませんからね。京都に行く前の晩は緊張して眠れませんでした。

 現場では失敗ばかり。髭を生やした大声の男がドジをやるものだから、スタッフも中村敦夫もみんな笑っちゃって撮影が止まるんですよ。当時は『失敗して苦しんでいるのに、なんて冷たいんだ』と思いましたが、実は僕をリラックスさせようとしてくれていたんだと思います」

 本格的な俳優仕事は、山田洋次脚本の1973年の連続ドラマ『遥かなるわが町』(TBS)だ。

関連記事

トピックス

炊き出しボランティアのほとんどは、真面目な運営なのだが……(写真提供/イメージマート)
「昔はやんちゃだった」グループによる炊き出しボランティアに紛れ込む”不届きな輩たち” 一部で強引な資金調達を行う者や貧困ビジネスに誘うリクルーターも
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
藤浪晋太郎(左)に目をつけたのはDeNAの南場智子球団オーナー(時事通信フォト)
《藤浪晋太郎の“復活計画”が進行中》獲得決めたDeNAの南場智子球団オーナーの“勝算” DeNAのトレーニング施設『DOCK』で「科学的に再生させる方針」
週刊ポスト
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
「漫才&コント 二刀流No.1決定戦」と題したお笑い賞レース『ダブルインパクト』(番組公式HPより)
夏のお笑い賞レースがついに開催!漫才・コントの二刀流『ダブルインパクト』への期待と不安、“漫才とコントの境界線問題”は?
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン
韓国・李在明大統領の黒い交際疑惑(時事通信フォト)
「市長の執務室で机に土足の足を乗せてふんぞり返る男性と…」韓国・李在明大統領“マフィアと交際”疑惑のツーショットが拡散 蜜月を示す複数の情報も
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
高校時代にレイプ被害で自主退学に追い込まれ…過去の交際男性から「顔は好きじゃない」中核派“謎の美女”が明かす人生の転換点
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《死刑執行》座間9人殺害の白石死刑囚が語っていた「殺害せずに解放した女性」のこと 判断基準にしていたのは「金を得るための恐怖のフローチャート」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン