官邸の面々は真っ青になった。しかも、今回も7月の参院選直前に運用状況を公表しなければならない。投資失敗で年金積立金に巨額の損失を出したことが明らかになれば、安倍政権は猛批判を浴び、3年前の選挙とは真逆の風が吹き荒れるのは目に見えている。
官邸の苦境を見てGPIFが動く。厚労省から出向している三石博之・審議役を中心に、内部の会議で年金積立金の運用実績の公表を参院選後の「7月29日」に延期する方針を決定した。「選挙が終わるまで国民に巨額損失を隠し通す」という露骨な選挙対策である。
民進党の山井和則・元厚労政務官は3月31日に開かれた党の年金運用問題の勉強会で厚労省幹部から直接聞かされた。
「厚労省の宮崎敦文・参事官に『年金の損失は重要な問題だから、参院選後に公表することがないようにしてほしい』と念を押したところ、参事官は『もう7月29日に公表することが決定し、塩崎(恭久)大臣に報告している』と言い出した。官邸と厚労省、GPIFのコンビプレーで隠すことにしたのだろうが、出席者はのけぞっていた」
前回参院選前には麻生財務相が5月の段階で「ウン兆円の黒字」と積極的にリークし、官邸にも「黒字は10兆円以上」と概要が伝わっていた。麻生氏も官邸も、今回の損失の概要はもうわかっているはずだ。
損失が出た以上、「アベノミクスで一番肝心の社会保障の元の元が消失した。申し訳ない」と潔く国民に謝罪したほうがいい。
※週刊ポスト2016年4月22日号