畠山少年は算数が得意で、小学校低学年で分数の掛け算割り算ができた。その一方で、国語は苦手。漢字の書き取りに苦戦し、テストで出題される「主人公の気持ち」は大いなるナゾだった。
それでも学校生活をうまく続けることができたのは、学則の厳しい中高一貫校だったことが大きい。アスペルガー症候群は、暗黙の了解や空気を読むのは苦手だが、明文化されたルールはわかりやすく、むしろ居心地がよいようだ。
その後、防衛医科大に進むが、ここも全寮制の厳しいところだったことが幸いした。難なく医師になり、自衛隊の医官を務めた後、仙台でクリニックを開業。現在はクリニックを知人に任せ、診療の傍ら、講演活動を行っている。
畠山医師は、自らの体験を『ぼくはアスペルガーなお医者さん』(KADOKAWA)にまとめた。そのなかで、障害の一つとしてとらえる「発達障害」という言葉ではなく、「非定型発達」と言うべきだと訴えている。賛成である。発達の仕方や速さは人によって違う。アスペルガー症候群は障害ではなく「脳の個性」なのだ。
●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に、『「イスラム国」よ』『死を受けとめる練習』。
※週刊ポスト2016年4月22日号