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毎週1冊しか扱わない書店 客足絶えず開店1年目から黒字

東京・銀座の森岡書店

 昨今アイデアで勝負し、チャレンジし続ける書店が続々登場している。東京・銀座で、昭和4年竣工のレトロなビルの1階にある『森岡書店』は、扱う本は毎週1冊だけ。世界初といわれる試みは海外でもニュースになり、ヨーロッパからの観光客も訪れる。今まで最も売れた本は写真集『庭猫』。

『森岡書店』の店主・森岡督行氏は別の場所で古書店を営んでいた8年前、写真集のイベントを開いた際に、このアイデアを思いついた。

 ニッチな分野の本だからこそ需要があると確信した構想は、建物との巡り会いにより実現した。一昨年12月、かねてから店を開きたいと憧れていた銀座のビルに空きが出ると知り、10年以上集めていた戦前の対外宣伝誌など貴重な古本1000冊を売却。資金をかき集めて、昨年5月開店にこぎ着けた。

 黒電話がジリリと鳴り響き、50年ほど前のフランス製の棚が置かれる店内では、本の内容から派生した商品も売られている。レシピ本のときはジャムやクッキーが並び、服や家具を売ることもある。毎週火曜に扱う本が入れ替わり、それに合わせて派生商品や展示物も変えて、著者もできるかぎり来店する。

「読者はリアルで著者とやり取りをしたいし、著者も反応を聞きたいと思っている。だから、そんな場を提供できたらと思いました」(森岡氏)

 たった1つの本と派生商品だけだが、今週はどんな本があるのかと客足は途絶えず、開店1年目から営業利益ベースでは黒字となり、アイデアは見事に成功を収めている。

■撮影/渡辺利博

※週刊ポスト2016年4月22日号

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