食材をすりつぶすのに欠かせない調理器具「すり鉢」。すり目が底から放射線状にまっすぐ伸びているのが一般的だが、“波のようなすり目模様”の革新的なすり鉢『山只華陶苑 片口すり鉢6寸』(6480円)が人気を得ている。
考案したのは、美濃焼の産地であり、日本の陶磁器生産量の約半数を占める岐阜県東濃地域にある藤兵衛窯の7代目、「山只華陶苑」(多治見市)の加藤智也さん(以下、「」内同)だ。
「左利き用のすり鉢を作ってほしい」と頼まれたことがきっかけで開発を始めたという。
「従来の直線的なすり目は、右回しの方がよくすれるようにできていました。それに、すっているうちに食材が上へ上へと上ってしまうのも不満でした」
そこで、2000年に改良を思い立ち、すり目の試作を重ね、現在のデザインに落ち着くまでに9年を要した。
「波紋様にしたことで、左右のどちらにすりこ木を回しても摩擦力が発揮でき、小さい力で手早くすれるようになりました。食材が上っていってしまうこともなくなり、短時間ですり上がるため、食材の風味を損なわず、香り高く仕上がります」
すり目のデザインは画期的だが、すり鉢は先代からの形を受け継いでいる。
「形だけではなく、材料となる土も地元でとれる粘り気のある“青土”を使っています。独特のざらつきが摩擦力となり、すり鉢には最適なんです。長く使っていると、すり目の山が摩擦で欠けてきますが、青土の場合、硬い磁器やガラスのように尖ったりしません。
先代は、『小さな子供のお腹に、鋭いかけらを入れたくない。だから青土を使い続ける』と常々、言っていたのですが、私もその考えを引き継ぎ、よりやさしいすり鉢作りを目指しています」
※女性セブン2016年4月28日号