ビジネス

鉄道車両の色替えはコスパ高い集客方法 デザイナー起用も増

若桜鉄道は期間限定でピンクSLを走らせる

 ゴールデンウィークとなれば普段はそれほど強く関心がなくても、珍しい鉄道に乗りに行こうと旅行する人が少なくない。でも、電車なんてどれもこれも似たようなデザインだと思っている人は、最新の車両デザインをみてほしい。驚くほど大胆なものが登場しつつある。とくに、鮮やかなカラーリングが近年は目立つ。鉄道関連の執筆も手がけるライターの小川裕夫さんが、最新鉄道車両のトレンド「色」についてリポートする。

 * * *
 なにげなく乗っている鉄道車両が最新型に変わったところで、その変化に関心を払う人は多くない。東海道本線を走る車両がE231系だろうと、E233系だろうと、時間通り目的地に到着すれば問題ないのだから。だが、鉄道に関心がない人でも、車両の色が変わると、すぐに「これ、新しい電車かな?」と気がついたりする。色の変化に、人は意外と敏感だ。

 最近の鉄道業界では、鉄道車両の色に変化が起きつつある。

 ロックバンド・くるりが「赤い電車」と歌った京浜急行電鉄は、長年にわたって赤色を伝統にしてきた。その伝統を打ち破るかのように、2005(平成17)年から青い車体「京急ブルースカイトレイン」の運行を開始。2014(平成26)年には黄色い車体の「京急イエローハッピートレイン」の運行も始めた。これらにより、京急=赤といったイメージは薄らいでいる。

 車体の色を変えるトレンドは、地方にも波及している。鳥取県の若桜鉄道は、国鉄の若桜線を第3セクターに転換した19.2キロメートルの路線。知名度は決して高くないが、SLを運行して観光客を惹きつけている

 その若桜鉄道が、5月1日~8日の期間限定で漆黒のSL車体をピンク色に塗り替えると発表した。「SLといえば黒」というのが、従来からの伝統。それには理由があり、SLは煤煙で車体がすぐに汚れてしまうため、少しでも汚れが目立たないようにするために黒にしている。その常識を破り、世界広しといえどもピンク色のSLを走らせるのは若桜鉄道ぐらいだろう。

 インパクトでは、JR東日本も負けてはいない。JR東日本は“走る美術館”と銘打った「現美新幹線」を4月29日から登場させる。上越新幹線の越後湯沢駅-新潟駅間を運行する現美新幹線のエクステリアのデザインは、アーティストの蜷川実花さんが担当。インテリアは、気鋭のアーティスト8人による競演だ。

 鉄道車両は外観に工夫を凝らして、空気抵抗を減らしてスピードを上げたり、静音性・制振性を高めてきた。しかし、凝ったデザインにするメリットは、どこにあるのだろうか?鉄道の車両や駅舎などのデザイン専門誌『鉄道デザインEX』(イカロス出版)の佐藤信博編集長は、外観のインパクトを重要視するようになった傾向について、こう解説する。

「鉄道は通勤・通学需要ともに頭打ちなので、各社は路線を維持するべく、集客に知恵を絞っています。そこで考え出されたのが、一風変わった車両を走らせることです。鉄道車両は全般検査と呼ばれる定期検査をSLは4年、電車は8年ごとにおこなう決まりです。その際、以前とは異なるカラーリングに塗り直す。これまでだったら、色を変えても地元紙や鉄道専門誌が取り上げるぐらいでしたが、近年はSNSで全国に発信できるようになりました。

 車両を新造すると数億円、改造でも1000万単位の費用が必要になりますが、全般検査のついでに色を塗り直すなら費用は安く済みます。それでいて、全国から関心を集められるのです。色の塗り替えは、費用対効果のよい集客方法と言えます」

 確かにピンク色のSLが走れば、全国から観光客が集まるだろう。また、報道陣も殺到するに違いない。地元民と鉄道マニアしか知らなかった若桜鉄道が、全国的に注目されることは間違いない。

関連キーワード

トピックス

新恋人A氏と交際していることがわかった安達祐実
《“奇跡の40代”安達祐実に半同棲の新パートナー》離婚から2年、長男と暮らす自宅から愛車でカレを勤務先に送迎…「手をフリフリ」の熱愛生活
NEWSポストセブン
イベントの“ドタキャン”が続いている米倉涼子
「押収されたブツを指さして撮影に応じ…」「ゲッソリと痩せて取り調べに通う日々」米倉涼子に“マトリがガサ入れ”報道、ドタキャン連発「空白の2か月」の真相
NEWSポストセブン
明治、大正、昭和とこの国が大きく様変わりする時代を生きた香淳皇后(写真/共同通信社)
『香淳皇后実録』に見当たらない“皇太子時代の上皇と美智子さまの結婚に反対”に関する記述 「あえて削除したと見えても仕方がない」の指摘、美智子さまに宮内庁が配慮か
週刊ポスト
元従業員が、ガールズバーの”独特ルール”を明かした(左・飲食店紹介サイトより)
《大きい瞳で上目遣い…ガルバ写真入手》「『ブスでなにもできないくせに』と…」“美人ガルバ店員”田野和彩容疑者(21)の“陰湿イジメ”と”オラオラ営業
NEWSポストセブン
「ガールズメッセ2025」の式典に出席された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月19日、撮影/JMPA)
《“クッキリ”ドレスの次は…》佳子さま、ボディラインを強調しないワンピも切り替えでスタイルアップ&フェミニンな印象に
NEWSポストセブン
結婚へと大きく前進していることが明らかになった堂本光一
《堂本光一と結婚秒読み》女優・佐藤めぐみが芸能界「完全引退」は二宮和也のケースと酷似…ファンが察知していた“予兆”
NEWSポストセブン
売春防止法違反(管理売春)の疑いで逮捕された池袋のガールズバーに勤める田野和彩容疑者(21)
《GPS持たせ3か月で400人と売春強要》「店ナンバーワンのモテ店員だった」美人マネージャー・田野和彩容疑者と鬼畜店長・鈴木麻央耶容疑者の正体
NEWSポストセブン
日本サッカー協会の影山雅永元技術委員長が飛行機でわいせつな画像を見ていたとして現地で拘束された(共同通信)
「脚を広げた女性の画像など1621枚」機内で児童ポルノ閲覧で有罪判決…日本サッカー協会・影山雅永元技術委員長に現地で「日本人はやっぱロリコンか」の声
NEWSポストセブン
三笠宮家を継ぐことが決まった彬子さま(写真/共同通信社)
三笠宮家の新当主、彬子さまがエッセイで匂わせた母・信子さまとの“距離感” 公の場では顔も合わさず、言葉を交わす場面も目撃されていない母娘関係
週刊ポスト
タンザニアで女子学生が誘拐され焼死体となって見つかった事件が発生した(時事通信フォト)
「身代金目的で女子大生の拷問動画を父親に送りつけて殺害…」タンザニアで“金銭目的”“女性を狙った暴力事件”が頻発《アフリカ諸国の社会問題とは》
NEWSポストセブン
鮮やかなロイヤルブルーのワンピースで登場された佳子さま(写真/共同通信社)
佳子さま、国スポ閉会式での「クッキリ服」 皇室のドレスコードでは、どう位置づけられるのか? 皇室解説者は「ご自身がお考えになって選ばれたと思います」と分析
週刊ポスト
Aさんの左手に彫られたタトゥー。
《10歳女児の身体中に刺青が…》「14歳の女子中学生に彫られた」ある児童養護施設で起きた“子供同士のトラブル” 職員は気づかず2ヶ月放置か
NEWSポストセブン