興味深いのは、人的なつながりだけでなく、日本会議の主張と安倍政権の掲げる政策に符合する点が多々あることだ。前出・菅野氏は「改憲の方向性もピタリと合っている」と指摘する。
昨年11月10日、日本会議の関連団体が開催した「今こそ憲法改正を! 武道館一万人大会」でのことだ。菅野氏がいう。
「壇上で開式の辞を述べたジャーナリスト・櫻井よしこ氏は、あるべき改憲の方向性について、『非常時に国民の権利を一時制限し内閣総理大臣に一種の独裁権限を与える緊急事態条項の追加』が必要だと述べました。
奇しくも同じ日の午前、安倍首相も衆院予算委員会で緊急事態条項を改憲の具体的項目として挙げています。全条文の改正ではなく、国民の賛同が得やすいところから進めるという優先順位を付けた改憲戦略は、見事に合致しています」
符合する点は他にもある。昨年、審議中の安保法制をめぐり、菅官房長官が「集団的自衛権の行使を合憲だとする憲法学者はたくさんいる」と発言して騒動に発展した。
「国会で“たくさんいるなら挙げてみろ”と追及された菅氏は、3人しか名前を出せなかった。その顔ぶれは、長尾一紘・中央大学名誉教授、百地章・日本大学教授、西修・駒澤大学名誉教授の3人。いずれも日本会議が活動を後押しする『美しい日本の憲法をつくる国民の会』などの関連団体で役員を務める学識者なのです」(菅野氏)
このように現政権との符号を指摘する声はあるものの、安倍政権が進める政策に具体的にどんな影響力を持つかはわからない。
日本会議の議連は超党派であり、公明党でいうところの創価学会のような特定の政党の「支持母体団体」とも異なる。前出の自民若手議員は「彼らは数百万票を集める」と語ったが、会員数は数万人の規模。実態は見えてこない。ただ、議員懇談会所属のベテラン議員はこう語る。
「約40年前に前身となる団体ができた当初は、愛国心を持つ人たちで集まっているものの、各論では多様性のある団体だった。それが今では徐々に先鋭化し、安倍さんの考えに同調できる人間でなければ居心地が悪く感じるような状態です」
※週刊ポスト2016年5月27日号