国内

「博士号なし」日銀のショーンK 間違いだらけの履歴書

経歴詐称疑惑の櫻井眞氏(日銀HPより)

「博士号は取得しておりません」──本誌が前号で経歴詐称疑惑を報じた櫻井眞・日銀審議委員は国会で釈明に追われた。

〈安倍官邸が送り込んだ「日銀のショーンK」重大経歴詐称疑惑〉と題した前号記事では、日銀がホームページで公開した櫻井氏の経歴の疑問点を指摘した。

 まず、〈東京大学大学院経済学研究科博士課程修了〉とあるにもかかわらず、東大に確認したところ博士論文が存在しない。〈大蔵省財政金融研究室特別研究員〉を務めていたという記述も、財務省は本誌に「(該当する年の在籍は)確認できない」と回答。さらに東大図書館に保存されていた櫻井氏の修士論文は原稿用紙わずか4枚だった。

 国会で櫻井氏の疑惑が追及されたのは5月10日の衆院財務金融委員会。質問者の宮崎岳志・民進党代議士は、まず文部科学省の担当者に「博士課程修了」の要件を質問。修了には「博士論文の審査と試験に合格する」ことが必須だと文科省令に明文化されていることを確認した上で、櫻井氏に疑惑を質した。

 櫻井氏は博士号を取得していないと認め、日銀の表記の慣習に従って「修了」としていたと答弁。大蔵省の研究室については、「当時の日本輸出入銀行から出向の形で辞令は出ていないが、研究室には勤務していた」と、いわば“ヤミ出向”だったと告白した。修士論文は、「4ページのものを書いた。東大紛争後の混乱期だったが、きちっと修士号はいただいた」と本誌の指摘をそのまま認めた。

 さらに、である。宮崎代議士は、日銀HP以外に「内閣が国会に提出した櫻井氏の経歴資料」にも間違いや疑問点が多数あることを指摘した。

 まず、〈昭和61年4月 経済企画庁経済研究所客員研究員〉という記載について、内閣府は「昭和61年度の在籍は確認できていない」と答弁。また、民間の投資顧問会社の役員だったという経歴も、「役員に就任した時期が登記簿の記載と違う」と指摘された。

 さらに〈平成4年4月 MSK基礎研究所国際金融センター所長〉という記述。MSKとは三井住友海上の略称だが、三井海上と住友海上が合併したのは2001年(平成13年)で、少なくとも組織名か就任日のどちらかが間違い──そんな具合に、とにかく疑問点のオンパレード。それらを指摘された櫻井氏の答えはこうだった。

「いろいろと組織を動いてきたものですから、半年とか1年とかズレている可能性がございますが、異動が激しかったことを反映しているかと思っておりまして。甚だ申し訳なかった」

 半年、1年のズレを気にしない御仁に、日々目まぐるしく動く日本の金融政策の舵取りを任せて大丈夫なのか。

※週刊ポスト2016年5月27日号

関連キーワード

トピックス

打撃が絶好調すぎる大谷翔平(時事通信フォト)
大谷翔平“打撃が絶好調すぎ”で浮上する「二刀流どうするか問題」 投手復活による打撃への影響に懸念“二刀流&ホームラン王”達成には7月半ばまでの活躍が重要
週刊ポスト
懸命のリハビリを続けていた長嶋茂雄さん(撮影/太田真三)
長嶋茂雄さんが病に倒れるたびに関係が変わった「長嶋家」の長き闘い 喪主を務めた次女・三奈さんは献身的な看護を続けてきた
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
中国・エリート医師の乱倫行為は世界中のメディアが驚愕した(HPより、右の写真は現在削除済み)
《“度を超えた不倫”で中国共産党除名》同棲、妊娠、中絶…超エリート医師の妻が暴露した乱倫行為「感情がコントロールできず、麻酔をかけた患者を40分放置」
NEWSポストセブン
第75代横綱・大の里(写真/共同通信社)
大の里の強さをレジェンド名横綱たちと比較 恵まれた体格に加えて「北の湖の前進力+貴乃花の下半身」…前例にない“最強横綱”への道
週刊ポスト
地上波ドラマに本格復帰する女優・のん(時事通信フォト)
《『あまちゃん』から12年》TBS、NHK連続出演で“女優・のん”がついに地上波ドラマ本格復帰へ さらに高まる待望論と唯一の懸念 
NEWSポストセブン
『マモ』の愛称で知られる声優・宮野真守。「劇団ひまわり」が6月8日、退団を伝えた(本人SNSより)
《誕生日に発表》俳優・宮野真守が30年以上在籍の「劇団ひまわり」を退団、運営が契約満了伝える
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン