前述したホテルココ・グランに特徴的なサービスがある。貸し出し品をテレビの画面上でリクエストできるのだ。無料貸し出し品目をザッと見ても、低反発枕、消臭スプレー、水枕に体温計、コンタクト保存液に携帯充電器からブルーレイディスクプレイヤーなど30品目以上に及ぶ。
種類や品数もそうであるが、リモコンのボタンひとつで客室に届けられることに驚く。在庫確認にコールバックという手間はゲストにとっても負担であるが、当然人件費が発生し料金に転嫁されている。高級シティホテルのような人的サービスの追求もホテルサービスの魅力だが、一般の利用者からすれば、サービス料その他別途料金の支払いはホテル利用時の杞憂でもある。
「いかに料金を加算するか」はホテル運営の肝であるが、多彩なコンセプトのホテルが誕生し、ホテルサービス合戦の様相を呈する中、サービスに見合わない料金の支払いに利用者は敏感だ。ホテル運営の常識から外れる「無料尽くしのお得感」の打ち出しは、異業種で成功をおさめていた運営会社だからこそ実現できたのだろう。
何を無料にするか有料にするのかはさておき、ホテルココ・グラン、ニュートン・サンザグループに共通するのは、利用者の声を徹底的に吸い上げ現場へスピーディーに落とし込こむところにある。
大規模なホテルでは成し得ないスピード感で次々と特徴的なサービスを実現する。ホテル業界の活況は、多様なホテルを生み出すとともに伝統的なホテル運営の常識を変えつつあるようだ。
●写真提供/瀧澤信秋