ビジネス

65歳まで定年が延びても「老後破産リスク」は減らない

 そんな状況下、再雇用希望者に追い風となる判例が出た。定年後、1年契約の嘱託社員として再雇用されたトラック運転手3人が「定年前と同じ仕事をしているのに年収が3割減ったのはおかしい」と会社を訴えた裁判だ。

 5月13日、東京地裁は〈特段の事情がなければ、同じ業務内容で正社員と再雇用後の嘱託社員の間に賃金格差があってはならない〉として、この運転手らの訴えを認め、会社側に定年前の給料との差額分、計約400万円を支払うように命じた。これは2013年に労働契約法の改正で追加された20条の条文(※)に照らして判断された。

【※/有期契約労働者と期間の定めのない労働者(いわゆる正社員)の間の「不合理な労働条件の違い」を禁止した】

 労働者にとっては心強い判決といえるが、前出の稲毛氏は「この判決を機に、再雇用後の給料を定年前と同じにするのが一般的な流れになるかどうかは怪しい」という。

「あえて定年前とは違う業務で再雇用することで、労働契約法20条違反を回避する動きが出ているからです。今後は『慣れない仕事に変わったうえに給料も下がった』と疲弊する人が増えて、65歳前に自分から再雇用を断念せざるを得なくなるケースが続出する可能性があります」(稲毛氏)

 定年延長でも老後破産のリスクが減らない現実──。もちろん65歳まで健康で働き続けられることは喜ばしいが、老後に理想の生活を送りたいなら、従来通り60歳で一旦“現役気分”を捨て、節約生活をスタートさせることが大切だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
笑顔に隠されたムキムキ女将の知られざる過去とは…
《老舗かまぼこ屋のムキムキ女将》「銭湯ではタオルで身体を隠しちゃう」一心不乱に突き進む“筋肉道”の苦悩と葛藤、1度だけ号泣した過酷減量
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン
折田楓氏(本人のinstagramより)
「身内にゆるいねアンタら、大変なことになるよ!」 斎藤元彦兵庫県知事と「merchu」折田楓社長の“関係”が県議会委員会で物議《県知事らによる“企業表彰”を受賞》
NEWSポストセブン
“ボディビルダー”というもう一つの顔を持つ
《かまぼこ屋の若女将がエプロン脱いだらムキムキ》体重24キロ増減、“筋肉美”を求めて1年でボディビル大会入賞「きっかけは夫の一声でした」
NEWSポストセブン
チームを引っ張るドミニカ人留学生のエミールとユニオール(筆者撮影、以下同)
春の栃木大会「幸福の科学学園」がベスト8入り 元中日監督・森繁和氏の計らいで来日したドミニカ出身部員は「もともとクリスチャンだが幸福の科学のことも学んでいる」と語る
NEWSポストセブン
横山剣(右)と岩崎宏美の「昭和歌謡イイネ!」対談
【横山剣「昭和歌謡イイネ!」対談】岩崎宏美が語る『スター誕生!』秘話 毎週500人が参加したオーディション、トレードマークの「おかっぱ」を生んだディレクターの“暴言”
週刊ポスト
お笑いコンビ「ガッポリ建設」の室田稔さん
《ガッポリ建設クズ芸人・小堀敏夫の相方、室田稔がケーブルテレビ局から独立》4月末から「ワハハ本舗」内で自身の会社を起業、前職では20年赤字だった会社を初の黒字に
NEWSポストセブン
”乱闘騒ぎ”に巻き込まれたアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」(取材者提供)
《現場に現れた“謎のパーカー集団”》『≠ME』イベントの“暴力沙汰”をファンが目撃「計画的で、手慣れた様子」「抽選箱を地面に叩きつけ…」トラブル一部始終
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン