ビジネス

65歳まで定年が延びても「老後破産リスク」は減らない

いつまでも「現役気分」が老後破産を招く(写真:アフロ)

 いま、大きな社会問題となっている「老後破産」。現役世代の多くが抱くリタイア後の生活は、貯蓄と退職金を少しずつ切り崩しながら、年金で足りない毎月の生活費は年齢とともに自然と掛からなくなるだろうから何とか生きていける、という甘い見積もりだ。

 2015年の家計調査報告では、夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦の生活費は月約27万円。しかし、リタイアしてから急に生活費を10万円以上切り詰めようと思っても、失敗するケースがほとんど。ゆとりの時間が増えて生活費がかえって膨らむ人が少なくないからだ。そして、老後破産へのカウントダウンが始まる──。

「例えば、趣味のカメラを極めようとカルチャーセンターに入ると、月の会費は数千円でも細かな機材や撮影旅行の費用など、実際の支出は数万、数十万円になることもある。

 また、学生時代の同窓会や会社のOB会など、自腹で飲む機会が増える。リタイア後も後輩にご馳走することで社会的地位を確認したがる人は多い。その他、あちこち体が悪くなれば予期せぬ医療費もかかる」(ファイナンシャルプランナー)

 これでは、あらかじめ思い描いていた老後の生活費に近づけるわけがない。前出のFPは、定年退職を迎える5年~10年前より数万円ずつ徐々に生活費を切り詰めていく“準備期間”が必要だと指南する。

 だが、ここにも落とし穴はある。再雇用制度が浸透したため、かつての60歳定年から65歳まで現役で働ける企業が増えた。つまり、生活費切り詰めのスタート時期が5年遅れても、「働いているうちは給料も貰えるから大丈夫」と油断してしまうのだ。

 社会保険労務士の稲毛由佳さんは、「そうやって油断していると、再雇用で働いている時から金融資産を取り崩す羽目になります」と警告する。

「再雇用後の賃金は、それまでの6~7割が一般的。たとえば、定年前に給料50万円だった人が30万円以下になることも珍しくありません。おまけに賞与がなくなるのが普通です。これでは定年前に30万円の生活水準で、残り20万円を貯金に回せていた人もその余裕がなくなります。働き続けても定年後の金融資産は増えないと考えたほうが無難です」

関連キーワード

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト