もちろん、国連に伝えられる情報が客観的なデータに裏付けされたものであれば、話は別だ。しかし、前述の「女子学生の30%が援交経験者」のような歪んだ数字が伝達されているとしたら、見過ごすことはできない。
この問題の構造を指摘するのが、国連の問題に詳しい外交問題アナリストの藤木俊一氏だ。
「そもそも国連は第2次世界大戦の“連合国”。旧敵国・日本への批判は通りやすい組織風土があります。そこに日本の左派団体が行って反日的なスピーチなどをすれば非常に歓迎されて、それに基づいた勧告などがつくられてしまう流れがある。日本の左翼はそれを利用し、いま国連という権威をバックにした反日活動を強化させているのです。
ただ問題は、日本の保守派は今まで国連をあまりに軽視していて、認定NGOを育てる努力もしないなど、欠席裁判状態を放置してきたこと。この現状は左派、保守の双方に責任がある」
慰安婦問題を例にとると、朝日新聞の「吉田証言」取り消し以降、国内の左派団体の主張は軒並み力を失った。その挽回のため、劣勢の国内を避け、保守言論の力が及ばない国連の場が選ばれているということなのか。
ちなみに杉田氏がジュネーブで見た左派系団体で「目立つ存在だった」という国連認定NGO「新日本婦人の会」に取材を申し込むと、「貴誌の取材は受けられない」との答え。同じく国連認定NGO「ヒューマンライツ・ナウ」事務局長で「女子学生の30%は援助交際経験者」発言の国連ブキッキオ氏と事前接触をしていたと一部報道があった弁護士の伊藤和子氏にも取材を申し込んだが、締め切りまでに回答はなかった。
国連と左派の“密会現場”は、左派の思惑と保守の無策でつくられたカーテンで、覆われているのだ。
●文/小川寛大(ジャーナリスト)/1979年、熊本県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。宗教業界紙「中外日報」記者を経て、現在「宗教問題」編集長。
※SAPIO2016年7月号