ライフ

英語の「クレイジー」使用はOKで日本語はダメという欧米崇拝

評論家の呉智英氏

 ネットスラングではよく見かける「基地外」という言葉を、ある政治家が集会で発言したとして問題視する新聞記事が掲載された。評論家の呉智英氏が、この言葉の由来と、これらの言葉を使うことをかたくなに禁じることのバカバカしさについて解説する。

 * * *
 5月25日の朝日新聞は、自民党の小島健一・神奈川県議がある集会で発言した言葉を問題視する記事を載せている。小島県議は米軍基地反対運動をする人たちについて「基地の外にいる人、基地外の人」と発言したというのだ。

 自慢ではないが、この言葉は1993年に「宝島30」誌の連載で私が最初に使った(『賢者の誘惑』所収)。1990年、丹羽兵助代議士が自衛隊基地を視察中に刺され、病院の輸血ミスのため死亡した。これを、基地内で基地外に刺され血ちがいで死んだ、と書いたのである。

 この連載名は「佯狂(ようきょう)賢人経綸(けいりん)問答」である。佯狂とは「狂を佯る(狂人のふりをする)」という意味で、古来賢者が狂人のふりをして社会批判をしたことに因む。イソップも曽呂利新左衛門(そろりしんざえもん)もその一種だし、『論語』や『荘子』には狂接輿(きょうしょうよ、狂人の接輿)が出てくる。私もこれら先賢のまねごとをしてみたわけだ。

 私が先賢のまねをしているのだから、小島県議が私に似た発言をしたからといって苦情は言えないだろうな。著作権として法的に保護されているわけでもないし。

 それにしても「気違い」という言葉が本当に使えなくなっている。一方で「クレイジー」や「マッド」は何のおかまいもなしである。日本語はいけないが英語ならよいという恥ずべき欧米崇拝思想の表われであり、有色人種蔑視と根は同じものがある。

 この2月、嵐山光三郎『漂流怪人・きだみのる』(小学館)が刊行され、いくつもの書評で取り上げられた。嵐山が編集者時代に身近に接したきだみのるの不思議な魅力が余すところなく描かれた好著で、増刷が続いている。きだの著作は私も愛読しており、嵐山の本によってきだがもっと読まれるようになることを願っている。

 というのも、私が新聞などで愛読書としてきだみのるを紹介する機会があっても、その原稿が必ず没(ボツ)になるからだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン
左から広陵高校の34歳新監督・松本氏と新部長・瀧口氏
《広陵高校・暴力問題》謹慎処分のコーチに加え「残りのコーチ2人も退任」していた 中井監督、部長も退任で野球経験のある指導者は「34歳新監督のみ」 160人の部員を指導できるのか
NEWSポストセブン
松本智津夫・元死刑囚(時事通信フォト)
【オウム後継「アレフ」全国に30の拠点が…】松本智津夫・元死刑囚「二男音声」で話題 公安が警戒する「オウム真理教の施設」 関東だけで10以上が存在
NEWSポストセブン
二刀流復帰は家族のサポートなしにはあり得なかった(getty image/共同通信)
《プールサイドで日向ぼっこ…真美子さんとの幸せ時間》大谷翔平を支える“お店クオリティの料理” 二刀流復帰後に変化した家事の比重…屋外テラスで過ごすLAの夏
NEWSポストセブン
9月1日、定例議会で不信任案が議決された(共同通信)
「まあね、ソーラーだけじゃなく色々あるんですよ…」敵だらけの田久保・伊東市長の支援者らが匂わせる“反撃の一手”《”10年恋人“が意味深発言》
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《デートではお揃い服》お泊まり報道の永瀬廉と浜辺美波、「24時間テレビ」放送中に配慮が見られた“チャリT”のカラー問題
NEWSポストセブン
8月に離婚を発表した加藤ローサとサッカー元日本代表の松井大輔さん
《“夫がアスリート”夫婦の明暗》日に日に高まる離婚発表・加藤ローサへの支持 “田中将大&里田まい”“長友佑都&平愛梨”など安泰組の秘訣は「妻の明るさ」 
女性セブン
経済同友会の定例会見でサプリ購入を巡り警察の捜査を受けたことに関し、頭を下げる同会の新浪剛史代表幹事。9月3日(時事通信フォト)
《苦しい弁明》“違法薬物疑惑”のサントリー元会長・新浪剛史氏 臨床心理士が注目した会見での表情と“権威バイアス”
NEWSポストセブン
海外のアダルトサイトを通じてわいせつな行為をしているところを生配信したとして男女4人が逮捕された(海外サイトの公式サイトより)
《公然わいせつ容疑で男女4人逮捕》100人超える女性が在籍、“丸出し”配信を「黙認」した社長は高級マンションに会社登記を移して
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン