こうしたアクティビストや投資助言会社による経営介入をどう捉えればいいのか。経済ジャーナリストの松崎隆司氏がいう。
「彼らは自分たちの利益を最大化させるために、あらゆる手段を使って影響力を行使しています。しかし、どんな横暴な投資ファンドであっても、株主である以上、会社にとってはオーナーであり、会社経営をチェックする役割も担っていることに変わりはありません。
これまで日本の株式会社は、あまりにも株主のことを軽視し過ぎていました。経営陣も株主に無頓着だったために、平気で会社を私物化したり、いつまでも院政を敷いたりと、長期的な企業価値の増大に向けたコーポレートガバナンス(企業統治)の仕組みがまったく働いていませんでした。だから、海外の機関投資家からも格好の攻撃材料になってしまったのです」
ようやく昨年より金融庁と東京証券取引所が主導し、株主との対話や利益還元、経営を公平中立に監視する社外取締役の増員などを柱とした「コーポレートガバナンス・コード」の適用が開始されたばかりだ。
前出の松崎氏は、「ガバナンスの実効力が表れるまでには時間がかかるだろう」と話す。
「いま経営再建に追われている東芝は、上場企業の中でも早くから社外取締役を多く置き、業務執行とは別に独立した経営監督機能を持たせた『委員会設置会社』として知られていました。それが、単なる見た目だけの“張りぼて”で、中身がなかったことが今回の問題で露呈しました。
他企業も例外ではありません。著名な大学教授や大手企業を渡り歩くプロ経営者などを連れてきて、華々しい布陣にすることだけがガバナンスではありません。どんな社外役員であれば、自社の経営を見守り企業価値の質を上げてくれるのか。株主はそういった視点から企業経営を見ていく必要もあるでしょう」(松崎氏)
東芝の株主総会は6月22日に開催される。そのほか、台湾企業に買収されたシャープは23日、燃費不正が発覚した三菱自動車は24日、同じくスズキは29日と、大荒れになりそうな総会が次々と控えている。
果たして、日本企業はアクティビストの付け入る隙を許さぬほど株主との恒常的な「対話」を重視し、真のコーポレートガバナンス経営に舵を切ることができるのだろうか。